サマータイムオデッセイ 其の四/幽夜の黙示録

2.8


フィッシュルの帰りも遅いので、一行はまず島を探索し、占いにあった次の幻境が存在するのか、また誰のものなのかを確認してみることにした。

…翌日(6時~24時)まで休む…

…みんなと会話する…

起きたか?

>う~ん…もう朝…?
 どう?何か起きた?

いや、なにも起こってないんだ、信じられないかもしれないけど。

おっ、目が覚めたか?
そんじゃ結論から言うぜ。
周りを探索してみたところ、怪しいもんは見つからなかった。

これまでの二つの幻境から見るに、「入り口」を担う物があるはずでござる。

>おかしい。

まだその時が来ていない、ということでしょうか?

つーことは、もうちょっと待つ必要があるってことか?

そうです。
それに、フィッシュルがいません。
彼女はきっと、私たちより先に入り口を見つけたいと思っているはずです。
もう少し待ってみましょう。
幻境に…
いえ、フィッシュルに時間をあげるためにも。

モナの意見に賛成し、皆でお茶を飲みながら休んだ。
その後、二組に分かれて探索することになった。
辺りを何度も行ったり来たりしていると、突然、浜辺に何かが現れた。


浜辺になにか落ちてるみたいだぞ!

一冊の本?
隣には…
ふむ、鴉の彫像のようでござるな。

この彫像、なんかオズに似てるような…

なぜ一緒に現れたのでしょう?
まさか、彫像がこの本を持ってきたとか?

これなんだろうな?
日記か?

どれどれ…
『聖国の詠唱』?
聞いたことのない本ですね。

見ろよ、この表紙。
まさか…
フィッシュルが書いた本か?

言われてみれば、確かにあいつが書きそうな本だな。
『聖国の詠唱』…
いいタイトルだ、気に入った。

何やら神聖なものを感じる名前でござる。

どうする?
触ってみるか?

…まだ帰ってきていませんが…
仕方ありません、先に見てみましょう。
もしフィッシュルがこの本を見つけたら、きっと私たちを探しに追いかけてくるはずです。

そうだな!
日記を誰かに覗かれるようなもんだし、絶対入ってオイラたちを止めに来ると思うぜ。

傍白
「今の国民にその記憶はないが、学者は知っている。
 聖徒時代より約六百年前、混沌の時代に皇女殿下がこの世に現れたことを」

えっ、まさかのナレーションですか?

さすが本の中の世界だぜ。
傍白が物語を語ってくれるなんてな。

道が途切れてて、先に進めなそうだぞ。

あそこに装置があります。
まるで、私たちが近づくのを待っているかのようですね。

オイラ思ったんだけど…
なんか全体的にあからさますぎないか?

聖国ですからね、大目に見てあげましょう。

それもそうだな。
それにこんなに見え見えってことは、本当は誰かに気付いてほしいってことだろうし。

さすがフィッシュル。
こんなところで恐ろしく素直だな。

フィッシュルの帰りも遅いので、一行はまず島を探索し、占いにあった次の幻境が存在するのか、また誰のものなのかを確認してみることにした。
やがて一行は海辺で夜鴉の像と、それが持ってきた不思議な本――
『聖国の詠唱』を発見した。
本に触れた一行は、中の幻境へと入って行った…

…奇妙な装置を試す…

傍白
「彼女は生霊を憐れみ、彼らが苦しむ姿を見たくなかった。
 ゆえに夜の色と幻夢を抜き取り、万物を庇護する夜を最初に紡ぎ出したのだ」
「臣下は皇女殿下の力を崇め、彼女の呼びかけに従った。
 後に『幽夜浄土』と呼ばれる神聖なる国へと移り住んだのだ」

本当に幽夜浄土のことだったのか!

かなりしっかりと作られているようです、悪くありませんね。

…物語の案内通り城に入る…

傍白
「我らは聖国を創り、皇女殿下を至高なる人と仰いだ。
 また詩歌や演劇、冒険などを国に持ち込み、幽夜浄土の輪郭を作り上げた」

…橋を直す…

「そして雨が止んだ時、皇女殿下は天の階段を降りられたのだ。
 臣下たちは、殿下が放つ最上の栄光を目にしたのである」

…物語の案内通り城に入る…

???
誰か――!
助けてください――!

助けを呼ぶ声?
いったい誰だろ?

…音の出所を探す…

こちらです、助けてください!

えっと、これって彫像だよな?

そんなこと言わないでください!
私はれっきとした幽夜浄土の騎士で、レオンと申します。

騎士?
全然そんな風には見えないけど。

レオン(夜鴉騎士)
見えませんか?
まあ、この際それはいいでしょう。
しかし、夜鴉騎士の鎧を設計し、支給してくださったオズヴァルド様のことはどうか責めないでください。

>オズヴァルド様?

聞いたことありませんか?
オズヴァルド・ラフナヴィネス、オズのフルネームです。

>知ってた。
>今、知った。

メギストスのほうがまだ言いやすいな。

うむ、拙者もそう思うでござる。

はは…
みんなそう言います…

皆さん、楽しくおしゃべりされているところすみません。
邪魔するつもりはないのですが、この先の扉が施錠されていることを皆さんご存じないですよね?

ああ、たしかに知らなかったけど。

親切なあなたたちが私を助けてくれましたら、扉の開け方を喜んで教えましょう。

そういうことでしたら…
助けてあげましょう。

…レオンを深井戸から脱出させる…

英雄たちよ、心より感謝いたします。
この胸の気持ちは言葉では言い表せないほどです。
扉を開ける合言葉は、「我が民に自由を与え、古き法則に囚われぬように」です。
どうかお忘れなきよう。

…塔への道を修復する…

「我が民に自由を与え、古き法則に囚われぬように」か。

傍白
「大書記官、各領主たち、忠実な夜鴉騎士は塔に登り皇女殿下に忠誠を誓う。
 鮮やかな紫色のドレスに口づけすることを、この上ない栄誉であると思った」

…塔の頂上に行く…

行き止まりみたいだな。
本が一冊あるだけだ。

さっき聞こえたのって、恐らく本に書かれてる物語だよな?

なるほど、書名にあった聖国は幽夜浄土のことのようですね。
この本は、民の視点から皇女殿下を賛美しているのでしょう。

>自伝の一種なのかな…

最後のページまでめくってみたが、この物語にはまだ続きがあるようでござる。

続きはどこにあるんだ?
オイラ、気になるぞ!
それは探索を続けるしかないであろう。
それより、読み終わった本は…
閉じたほうがいいと思うでござるよ。

…『聖国の詠唱』を閉じる…

おや?
場所が変わったようです。
ただ、浜辺に戻ったわけではなさそうですね。

ここって、モンドの家みたいだな。

フィッシュル
ごきげんよう、いと尊き「断罪の皇后」よ。

???
愛しいエミちゃん、ステーキと漁師トーストを作ったわよ。
さあ、温かいうちに食べましょう。

フィッシュル
コホンッ!
母上…

???
あらら、私ったら、うっかりしてたわ。
コホンッ!
断罪の皇女よ、汝は気付いていたか?
今は昼餉の時であることを。

フィッシュル
ええ、もちろんよ、母上。

???
嗚呼――!
窓からの眺めがなんと美しいことか。
皇女に皇后よ、「断罪の皇帝」である余と共に、野掛けに興じようではないか。
景色を愉しみ、天から賜りし美味を満喫しよう。

フィッシュル
ええ、喜んで!

……

……

えっと…
その、みんな何か言いたいことはあるだろうけどさ…

>……

単刀直入に聞くけど、エミちゃんって…
フィッシュルの本名か?

だろうな。
それからさっき聞こえた二つの声は、フィッシュルのお父さんとお母さんだと思うぞ。

…どうして、私を見るんですか!?

失礼かもしれぬが、その…
メギストスとは、本当にお主の苗字でござるか?

まったく、私を馬鹿にしないでください。
占星術師である私のフルネームは、アストローギスト・モナ・メギストスで間違いありません。

…すまぬ。

長いな!

この名を待つことができるのは、天才だけなんですよ。

どういう理屈だよ…

それより先ほどのあれ、どう思いますか?

ひとつ確信したのは、「本を閉じる」ことも幻境に変化をもたらす一種の方法なのでござろう。

でも、フィッシュルの家族まで彼女に付き合ってあげてるなんて、すごいな。

いつもあの調子だったわけではないと思いますよ。
あの声の感じからして、たぶん幼少期の思い出かと。
大きくなってからも同じかどうかは分かりません。

モナはよく知ってるな!

友達なんだから、これぐらい当然のことです。

…フィッシュルは今、どこにいるんでしょう。

先ほどの話では出かけると言っていた。
様子を見に行ってみるでござるよ。
何か手がかりが見つかるやもしれぬ。

…部屋から離れる…

わっ、戻ってきたみたいだぞ。
いや、待った。
どうして戻ってきたんだ!
まだ物語の途中だったよな!?

この感じ、最悪です。
まるで占星術の教本を買った後に偽物だと気づいた時や、夕食の途中で財布を忘れたことに気づいた時みたいです…

ああ――!

ああ――!
モヤモヤします!

二人とも、かなりショックを受けてるみたいだな。

かく言う拙者も、読んでいた本が打ち切りになるのは好まぬ。

ははっ、そりゃ誰だって嫌だろ。
みんな、もう一回幻境の中に入ってみようぜ。

おお、それもそうだな!
すぐ出発しよう!

…ん?

何も起こらぬな。
場所もそのままでござる…

あれ、さっきまで入れたのに、どうして入れてくれないんだ?
どういうことですか。

せっかくあそこまで読んだのに、意地が悪いにもほどがあります!

ふむ…
もしかすると、この本はもう「最後まで読み終わった」のやもしれぬ。
幻境から離れる前、最後のページをめくったであろう?
拙者が思うに、この『聖国の詠唱』は一冊で完結しないのではないだろうか。

まるで安っぽい娯楽小説みたいな売り方だな――
続きは下巻を買ってくれってことか。

くっ、何が何でも結末が見たくなってきました。

???
ふむ、結末か。
みんな、その続きが気になってるみたいだ。

ん?
そこにいるのは誰です?

おっと、まずい。
僕を見ているな、姿勢を正さないと。

あなたは…

僕は「道を聞かれるのが好きなアーノルド」だ。

その名前、役割が丸わかりだな!?

ではアーノルド、あなたに聞きたいのですが…

アーノルド(道を聞かれるのが好きなアーノルド)
アーノルドじゃない、「道を聞かれるのが好きなアーノルド」だ!

道を聞かれるのが好きなアーノルド、聞きたいことがあるのですが!

何でしょう、お嬢さん!

『聖国の詠唱』の続きを知っていますか?
どこにあるのでしょう?

ふっふっふ、それなら僕に聞いて正解だ。
『聖国の詠唱』は幽夜浄土の聖典であり、三巻まである。
残り二冊は、王城にある二つの高き所に隠されてるんだ。
もし第二巻を探すのなら、高い塔の上まで行かなければならない。

高い塔って、あの塔のことですか?

そう、あの塔に聖典が保管されてる。
向こうの洞窟をよく調べれば、あそこへと通ずる秘密の近道が見つかるだろう。

ありがとうございます、アーノルド。

アーノルドじゃない、「道を聞かれるのが好きなアーノルド」だ!
美しきお嬢さん、他に聞くことはないかな?
彼女がいるかどうか、給料をいくらもらってるか…

ありませんね、さようなら!
あの夜鴉は放っておきましょう。
向こうの洞窟にある秘密の近道を使えば、塔の上へ行けるようです。
さっそく行ってみましょう。

ああ、お嬢さん!
本当に僕に興味がないと?
君があまりに美しいから、幽夜浄土の秘密を教えたというのに!
あんまりじゃないか、お嬢さん…!

-------------------------

あのお嬢さんの顔を見た感じ、何かまずいことを言ってしまったのだろうか?
どうすれば、彼女に気に入ってもらえるのだろう。

-------------------------

そびえ立つ城、忘れられない伝説…
これがフィッシュルの心の中の「世界」なのだろう。
彼女の幻境を訪れた者は、誰もがその景色を称賛する。
しかし、夢には代償がつきもの。
美しい花は、とげだらけの繁みから生まれるものなのだ…

…『聖国の詠唱』の第二巻を探す…

厳かな夜鴉(幽夜浄土の守衛)
待て!
お前ら何者だ!

凛とした目つきの夜鴉(幽夜浄土の守衛)
その様子、幽夜浄土の臣下ではないな?
言え!
何しに来た!

まさか守衛がいるなんて!

>慌てる必要はない。

えっ?
なにをするつもりだ?

>私たちは皇女殿下の臣下。
 星海を越えてきた者。

厳かな夜鴉
殿下の臣下だと?
それを証明できるのか?

まったく、そのような横柄な質問をしてくるとは、あなたたちの視野の狭さを証明しているようなものです。
「我が民に自由を与え、古き法則に囚われぬように」

凛とした目つきの夜鴉
そ…それは、幽夜浄土の合言葉!
本当に殿下の臣下だったのか!

厳かな夜鴉
なんてことを!
皆さん、失礼なことを申してしまい、すみません…

ほら、もう下がったらどうだ?

厳かな夜鴉
ええ、今すぐ姿を消します…

よし、行ったな。

これが『聖国の詠唱』第二巻でござるな。
皆の者、準備はできておるか?

おう!
出発だ!

…『聖国の詠唱』の第二巻をめくる…

傍白
「しかし、幽夜浄土は悪夢のように広がる暗雲に包まれた。
 邪龍タスラクが地下へと潜り、海底を渡って、王城の上を彷徨い始める」

辛炎
えっ?
龍が現れたのか?
空が少し暗くなっただけだと思うけど。

楓原万葉
龍…
それは何かを指す比喩ではなかろうか?

モナ
なるほど…
彼女を否定し、その妄想に異を唱えたものすべてが、彼女の宿敵である「邪龍タスラク」になったわけですね。

…装置を利用して道路を修復する…

傍白
「臣下は危殆を悟り、救世主に祈りを捧げる」

…道路に沿って進む…

…装置を利用して道路を修復する…

傍白
「皇女殿下は降臨したが、大戦による災いは王城にまで及んだ」

…道路に沿って進む…

…装置を利用して道路を修復する…

傍白
「だが、ついに彼女は聖裁の雷をもってして龍の鱗を貫く。
 龍の血による嵐の中、彼女は言葉を告げた…」

…道路に沿って進む…

レオン
誰か――!
誰かいますか?
助けてください――!

もうっ!
今、大事なとこだったのに!
皇女は最後になんて言ったんだ!?

辛炎
今の声、どこかで聞いたことあるな。
もしかして、またあの夜鴉騎士のあんちゃんじゃないか。

…音の出所を探す…

レオン
ああ、よかったです…
あれ?
またあなたたちでしたか?

モナ
それはこっちのセリフです。
またあなたですか。

…レオンを救う…

…レオンをと会話する…

レオン
このような無様な姿を幾度もお見せしてしまい申し訳ありません。
やはり今の実力では、立派な夜鴉騎士を演じるのはまだ早いようです…

楓原万葉
演じる?

レオン
ええ、恥ずかしながら、私は本物の騎士ではありません。
最近、劇団で騎士役をもらった新人役者で、役作りのため準備をしていたんです!

パイモン
それって、胸を張って言えるようなことなのか?

レオン
皆さんはご存知ないかもしれませんが、幽夜浄土で演劇とは非常に重要な文化なのです。
良き演出は、皇女殿下への一番の恩返しになります。

辛炎
へぇ、つまり、あんたらんとこ特有の文化ってことだな?


レオン
ええ、そうなりますね!
ですので、騎士を演じられるのを私は誇りに思っています。

モナ
あなたたちの皇女殿下は、なぜ演劇が好きなのでしょうか?

レオン
皇女殿下は昔、このように言ってました。
「わたくしのために祭典を催し、荒野で劇を演じよ。
 わたくしにひれ伏し、永夜の栄光と引き換えに、純潔の幻夢を捧げなさい」と。
おそらく、皇女殿下は真の芸術とは何たるかを知っているのでしょう。
人間の奥深くに隠された喜怒哀楽を、見分けることができるんだと思います。
演劇において魂とは、感情の凝集と昇華です。
演劇への理解が深い方は、きっと繊細で情緒豊かな心を持っているんでしょうね。

モナ
…なるほど。

楓原万葉
教えていただき感謝する、騎士殿。

レオン
お、おお!
あなたは…
私のことを騎士と呼んでくれるのですね?
嬉しいです、ありがとうございます!
それでは、私はこの栄光と共に、己の戦場へと赴きます。
皆さん、縁があればまた会いましょう!
パイモン
もう会わなくて済むように、今度こそ気をつけろよ!

レオン
あっ、そうだ。
扉を開けるための合言葉をお教えしますね。
「命令に従え、翼を広げて出航せよ」です。

…城の図書館に入る…

パイモン
「命令に従え、翼を広げて出航せよ」だな。
おおっ、本が現れたぞ!

…「『聖国の詠唱』を閉じる…

…廊下からの音を聞く…

フィッシュル
偉大なる父上、母上、ごきげんよう。
今日は幽夜浄土の祭典の日。
二人には…

フィッシュルの父
エミちゃん、その年になっても、まだそれを続けるのかい。

フィッシュルの母
もう大きいんだから、童話の話を信じるのはやめなさい。

フィッシュル
でも…

フィッシュルの母
そうだ。
お母さん、新しい本を買ったの。
楽器の弾き方が詳しく載ってるから読んでみて、いいわね?
より有意義に時間を使うのよ。

フィッシュル
…お母さん、わ…分かった。

パイモン
また戻って来たな。

楓原万葉
偶然にもかの邪龍の正体を垣間見たでござるな。

辛炎
はぁ、ああいうのすごく共感できるぜ。
アタイたちの趣味を時間の無駄だと思ってる人が、たまにいるんだよな。

モナ
おや?
あなたは…

アーノルド
僕は「道を聞かれるのが好きなアーノルド」だ。

モナ
いえ、私が言いたいのは、どうしてまたあなたがここにいるのかです。

アーノルド
ふっふっふっ、そろそろ君たちが『聖国の詠唱』の第三巻を探してる頃だろうと思ってね。

モナ
ええ、その通りですけど…

アーノルド
親愛なるお嬢さん、君が僕のためにすることなど何もない。
君の美しさこそが、僕への一番のご褒美なんだ。
だから君が求める答えを、今ここに捧げよう。
聖典の第三巻は、王城の最上階にある。

楓原万葉
そこに見張りはいるだろうか?

アーノルド
ああ、もちろんいるさ。
何をバカなこと言ってるんだ?
貴重な本を野ざらしにするような国なんてないだろう?

楓原万葉
つまり、そこも夜鴉によって守られておるのだな。

アーノルド
聖典を守るのは、臣下にとってこの上ない栄誉だ。
でも、こちらのお嬢さんはきっと聖典を読みたいだけなのだろう?
ああ、君はなんて美しい顔をしているんだ。
その上、知性に満ち溢れている。
君の仲間も英雄のような顔立ちをしているし、きっと聖典に秘められた物語を理解できるだろう。
大書記官のオズ様が伝えし殿下の偉業は、幽夜浄土の宝。
あの本を読むたびに、殿下が幸せであることを願うばかりだ。

-------------------------

アーノルド
ああ、どうやって自分をアピールしたらいいんだ…
オホンッ!
お嬢さん、僕と一緒にコーヒーを飲まないかい?
コーヒーが苦手なら、紅茶、ミルクティー、ホットココア、どれでもいいよ。
もし嫌なら、君一人で飲んでくれても構わない。
僕は遠くから君を見守るだけでいいんだ。
君が幸せなら、僕も幸せになれるからね。

-------------------------

もう一人のフィッシュル――
彼女は闇から生まれ、この幽夜浄土を支配している。
恐怖や臆病さは心を蝕むものなのだろうか?
二人の皇女…
果たして最後に勝つのは?

…『聖国の詠唱』の第三巻を探す…

厳かな夜鴉
待て!
またお前たちか!

パイモン
なんだよ?
オイラたち、皇女殿下の臣下だぞ。

凛とした目つきの夜鴉
いいや、でたらめを言うな!
皇女殿下が、君たちのような小者を認めるはずがない。
モナ
はぁ?
まったく、今の自分の発言に責任を持てますか?

凛とした目つきの夜鴉
もう一度言うが、皇女殿下が君たちのような…

???
汝は今、誰のことを小者と言った?

厳かな夜鴉
皇女殿下にオズ様!?

オズ
幽夜浄土の臣下たちにそのような無礼なことを言うとは、守衛の諸君は些か礼儀に欠けているようですね。

フィッシュル
ふん。
わたくしが自ら選び抜いた臣下たちを軽んじるとはね?
早々に立ち去りなさい。

厳かな夜鴉
しかし…

フィッシュル
しかしではない!

凛とした目つきの夜鴉
は、はっ!

パイモン
フィッシュルにオズ、おまえら戻ってきてくれたのか!

フィッシュル
ふん、ひとまず、そう思ってくれていいわ。

オズ
お嬢様は、幻境には向き合いたくないが、時間をかけてここまで辿り着いたからには、皆様を見捨てるわけにはいかない、とおっしゃっています。

辛炎
モナが言ってた通り、この幻境に「向き合いたくない」んだな。

パイモン
日記を誰かに覗かれてるような気分になるもんな?

フィッシュル
…ふん、浅はかね。
もし、わたくしが容易く流されるような人物だったら、こんな立派な幽夜浄土、この世に存在していないわ。

オズ
お嬢様は、ここには別の問題がある、とおっしゃっています。

楓原万葉
問題?
何かあったのでござるか?

フィッシュル
…うっ…
その話はまた後にするわ、まずは用事を済ませるわよ。

辛炎
さあ、行こうぜ。
本はもう目の前だ、ぼーっとすんなよ。

…『聖国の詠唱』の第三巻をめくる…

フィッシュル
ふん…
壮大で脆く、巨大で臆病…
驚天動地とはこのことね、気分が悪いわ!

オズ
お嬢様は、これほど大仰な幻境は見たことがなく、本人も驚いている、とおっしゃっています。

…橋を直す…

…花園に入る…

パイモン
お城があるけど、なんだか形が不完全だな。
フィッシュル、これっておまえのか?

フィッシュル
うっ…
少し考えさせてちょうだい。

オズ
お嬢様、その必要はありません。
これはかつて、お嬢様が悲しみのあまり手を滑らせて壊してしまった城のおもちゃかと。

フィッシュル
オズ!
それを言わないで!!
今、思い出したわ。
わたくしの城は、二つの部分が欠けてしまったの。

パイモン
ってことは、その欠けた二つの部分を探せばいいってことだな?

傍白
「…龍の血による嵐の中、彼女は言葉を告げた。
 『我が民に自由を与え、古き法則に囚われぬように』と」

オズ
この知恵と博愛に満ちたお言葉、まさにお嬢様が書かれたもの。

フィッシュル
ふん、この王国はそれとはまったく違って見える。
背後にどのような影が隠されているのか、気になるわね…

傍白
「皇女殿下は再び詠い始める、『幽夜浄土』の聖歌を」

…城のおもちゃの欠片を探す…

傍白
「臣下が彼女を拝んだ。
 すると、彼女は『わたくしのために祭典を催し、荒野で劇を演じよ。』」
「『わたくしにひれ伏し、永夜の栄光と引き換えに、純潔の幻夢を捧げなさい。 』と告げた」
「石を拾って、城と町を作り、山や海を拓いた」
「金碧に輝く我らが王国は、小さくも禁忌の楽土である」

パイモン
いい結末になりそうだな!

…城のおもちゃを完成する…

レオン
うぅ――
助けてください――

…城の図書館に入る…

パイモン
なんとなく現れる気がしてたぜ。

レオン
そう言わないでください。
確かに未熟ではありますが、絶対にこれが最後だって予感がしてるんです!

…レオンを救う…

…レオンと会話する…

辛炎
あんちゃん、こんな調子でこれから先、どうやって外を歩くつもりだよ?

楓原万葉
旅には体力と胆力、それから危機意識が必要でござる。
体力と胆力が身についたら、危機意識を高めるといいでござろう。

レオン
皆さんのお言葉、しかと胸に刻みます。
でも今度こそ、本当にお別れです。
気づきましたか?
空は晴れ、海面は穏やかで美しい姿を見せています…
このような日を迎えるために、私たちは長いこと待ち続けてきたのです。
皆さんは、私のようなうっかり者が役者になれるのかと、疑問に思ったことでしょう。
でも信じてください。
これは決して偶然手にしたわけではありません。
夜鴉は常に仕事を探しています。
仕事、すなわち運命です。
私たちは、自分が果たすべき役割を見つけるため生まれてきました。
あなたたちはまだご存知ないかもしれませんが、『聖国の詠唱』とは実は預言書なんです。

パイモン
預言書?
あれって、おまえたちの聖典じゃないのか?

レオン
ええ、そうです。
数百年前、幽夜浄土が不吉な気配に覆われた時、私たちの主は国を治めることに興味を失ったかのように、何も行動を起こしませんでした。
その後のことです。
ある日、大書記官オズが姿を現しました。
彼は聖典と心震わす預言をもたらしたのです。
その預言は、本に書いてあった通り、幽夜浄土の真の幸せが何なのかを示すものでした。
だから、私たちはいずれ暗雲が消え去ると確信し、今もその日が訪れるのを心から待っているのです。
救世主…
皇女殿下よ。
彼女はきっと、ここがどんなに幸せな場所だったかを思い出してくれます。
彼女のためにも、私たちは預言の通りに劇を捧げるつもりです。
だから私は立ち上がり、勇士を演じることにしました。
幾多の苦難を乗り越え、剣の山と火の海を渡り彼女に、私の真心を捧げるために。

フィッシュル
……

レオン
あ、あなたは…
皇女殿下!?

パイモン
ああ。
さっきおまえを助ける時、なぜか後ろに隠れてたけど…

フィッシュル
我が臣下よ、汝の意志は邪龍の手足を断つに足る強さである。
今、我は汝の祝福を受けよう。

レオン
大変光栄に思います!

フィッシュル
汝はよくやった。
騎士の美徳も備えている。
さあ行け、準備をして劇の開幕を待つがよい。

オズ
皇女殿下へと捧げる敬虔な心を、私は誇りに思います。
幽夜浄土全土を覆う暗雲は、皇女殿下率いる従者の私たちが必ずや晴らしましょう。

レオン
…ありがとうございます、殿下、それに英雄たちも!
それでは、私はこれで失礼します。
あっ、そうだ。
もし必要でしたら…
この先の扉の合言葉は「永夜の序曲」です。
覚えておいてください。

パイモン
オイラ、訳がわからなくなってきた…
えっと、なんの芝居をやってたんだ?

フィッシュル
この場にいる者は、誰一人としてわたくしの至言を理解できないのかしら?
愚昧ね。

オズ
お嬢様は、皆様が馬鹿である、とおっしゃっています。

モナ
それは訳さなくても分かります!
それから誰がお馬鹿なのかも、よく分かりました。

楓原万葉
ふむ、皇女殿下が前に言っていた「用事」とは、このことでござるな。

辛炎
なら急ごうぜ!
行こう!

パイモン
えっ?
待てって、いったいどうなってるんだ…?

…城の上層階に入る…

パイモン
「永夜の序曲」。
本だ!
早く閉じよう。
また変なところに飛ばされなきゃいいけど…

…『聖国の詠唱』を閉じる…

モナ
ここは、図書館?
私たち、どうして図書館にいるのでしょう?

フィッシュル
……
…ふん、苦心し探した我が宿敵よ――
無為で軟弱な皇女とは、あなたのことかしら?

幽夜フィッシュル(漆黒寂滅の少女)
ばかばかしい。
わたくしに勝てると思っているの?
先ほどあなたから滲み出た恐怖と気の迷い、わたくしにははっきりと見えていたわよ。

パイモン
フィッシュルがもう一人いるぞ!
あれって、おまえの影か?

幽夜フィッシュル
影?
ええ…
確かにそういう関係ね。
負けを認めにきたのかしら?
エミちゃん。

フィッシュル
うっ…
あなた…

幽夜フィッシュル
そこの夜鴉はオズよね?
よろしい、わたくしも長いこと待っていたの。
オズという大書記官が、『聖国の詠唱』を幽夜浄土に持ち込んだと聞いたわ。
恐らく、あなたのことよね。

オズ
…恐縮です、お嬢様。

辛炎
なんで、あいつのことをお嬢様って呼ぶんだよ?

オズ
ご覧の通り、あの方もお嬢様です。
お嬢様である以上、私のご主人様でもあります。
違いますか?

楓原万葉
…筋は通っておるな。

幽夜フィッシュル
幽夜浄土とは、一度入れば二度と戻れない場所。
ここに来たということは、わたくしの支配を受け、隷属するということよ。
オズに至っては、わたくしを不快にさせる預言書を持ち込み、愚かな臣下たちにその茶番を信じさせた。
とはいえ…
オズであることに変わりはない、わたくしの傍に来なさい。
「フィッシュルはオズと組まないと」。

オズ
お嬢様からそのように認めていただき恐悦至極です。
それでは、お言葉通りそちらへ。

フィッシュル
オズ!?
どこへ行くの!?
モナ
向こうへ行っちゃいましたよ、フィッシュル。
あなたが飼っていた鴉ですよね?

フィッシュル
うぅうう――
今はわたくしを非難してる場合じゃないでしょう!
オズ、何を惑わされているの?
彼女の言葉を信じないで。
幽夜浄土は、自由と演劇の聖地でしょ?

幽夜フィッシュル
大間違いよ。
幽夜浄土は、そんな遊園地のような場所ではないわ。
いい…
ここは現実を直視できない人のための墓場なの。
あなたはここに埋葬される。
そして、わたくしは共に作り上げた想像上のオズと一緒に、永遠に王城で暮らすの。

フィッシュル
…墓場…

幽夜フィッシュル
あなたが一番知っているはずよ。
なぜ幽夜浄土に雨が降っているのか。
なぜこの楽土には本物の歌声がないのかを。

フィッシュル
…あなたよ!
全部あなたのせい!

幽夜フィッシュル
ふふふっ、可笑しいわね。
つまり、あなたのせいでしょ!
エミちゃん!

フィッシュル
うぅ…!

幽夜フィッシュル
これほど壮大で虚構に満ちた王国を想像しておいて、結局は耐えられないのね。
自分が創造したものに動揺して、いくら逃げようとも自分を変えられないなんて。
あなたがここに溶け込めないから、わたくしが降臨してその代わりを務めるの。
幽夜浄土はもはやわたくしの物、あなたに指図する権利なんてないわ!
フィッシュル
わ…
わたくしは…

幽夜フィッシュル
エミちゃん、あなたは軟弱な愚か者。
この世界を支配するのにふさわしくないわ。
出ていきなさい。

辛炎
おい、いい加減にしろ!

モナ
見事に自分に罵倒されているようですね。
あなた、ずっとこの件で悩んでいたのでしょう?

フィッシュル
モナ…
うぅ…

モナ
何ですか、その顔は?

フィッシュル
わ…わたくし…

モナ
ふん、まさか負けを認めるわけじゃないですよね?

フィッシュル
…認めたくないけど…
彼女の言う通りかもしれない…

楓原万葉
いや、考えを整理するでござる。
皇女殿下、何故ここへ来たのか覚えておるか?

フィッシュル
万葉…

楓原万葉
拙者は稲妻の剣客で、お主の安全を守るために。
そして、ここにいる皆は、お主の呼びかけに応じてやってきた者でござる。

辛炎
自分の墓場を持つっていうのも、なかなかクールな響きだな。
でも残念ながら、幽夜浄土は墓場なんかじゃない。

フィッシュル
辛炎…

幽夜フィッシュル
へぇ、友達ができたようね。
でも、それでわたくしに勝てるの?
わたくしはあなたにとっての恐怖と闇であり、長年逃れられなかった悪夢。
わたくしを前に、あなたは何もできない。

フィッシュル
…………
…違う。
まだ…
まだ負けてない。
わたくしこそ、真の勝者よ!
絶対にあなたを後悔させてあげる!

…高台のところへ行く…

楓原万葉
焦らず、一歩ずつ着実に進もう。
心を落ち着かせることで、勝利に繋がるでござる。

辛炎
元気出せ!
他の人に負けんな、自分自身に負けんな!
あんたは全然弱っちくねぇぞ。

モナ
おや?
また占いの力が働いたようです。
結果は…
私の知っているフィッシュルの大勝利ですね。

…「幽夜フィッシュル」と会話する…

幽夜フィッシュル
あり得ない、あの悪夢のような図書館から抜け出せるなんて…
下がりなさい!

フィッシュル
…今もまだ、わたくしが負けると思ってるのかしら?

幽夜フィッシュル
あなた!

フィッシュル
あなたはわたくしのことを見下し、弱く小さいと思い込んだ。
確かに、そのような日々を過ごしていたこともある。
だって…
わたくしは現実を直視できない、毎日夢ばかり見ている臆病な人間だったから。
けど、いま分かった。
この幻境を目にした瞬間、あらゆるものを理解したわ。
そこにある息を呑むような幻象を見たかしら?
壮大で美しい…
それこそがわたくしの想像力であり、力の根源でもある。
あなたは傲慢に見えるわ――
だって暗いものはいつだってそうだから。
でも、それは間違っていた…
あなたは完全な皇女じゃない。
わたくしの影に潜む独りよがりのチリのような存在!
あなたこそ負け犬で、足を引っ張っている張本人よ!
幽夜フィッシュル
くっ!

フィッシュル
軟弱ゆえにトゲだらけで、臆病ゆえに自暴自棄で誤魔化そうとしている。
そんなあなたこそ…
わたくしより弱い。
さあ、返してちょうだい!

幽夜フィッシュル
な、なにを?

フィッシュル
わたくしのものをよ!
幽夜浄土、王城、民…
それと、わたくしのもっとも大切な仲間、オズを!

オズ
ああ、お嬢様がこれほど流暢に立派なお言葉を話されるとは、真の皇女へと成長されたのですね。

フィッシュル
よくもそんなことが言えるわね、この裏切り者!

オズ
いえ、お嬢様。
私がもう一人のお嬢様に付いたのは、皆様にあることを証明するためです。
ご存知の通り、私オズは断罪の皇女――
フィッシュルに付き従います。
お二人ともフィッシュル様なのであれば、どちらに付こうと問題はないはずです。
しかし、私がもう一人のお嬢様に付いても、お嬢様は自身の身分を見失いませんでした。

楓原万葉
なるほど、賢い立ち回りでござるな。

フィッシュル
わたくしの身分?

オズ
「フィッシュル」というのは、何を意味していると思いますか?

フィッシュル
えっ?

オズ
これはお嬢様への質問です。

フィッシュル
フィッシュルは…

幽夜フィッシュル
人生の落伍者であり、恐れを抱く臆病者よ。
空想の先にある嘘に塗れた、不完全な自分に向き合えない人。

オズ
いいえ、違います。

フィッシュル
フィッシュルは…
わたくし?

オズ
おお、理解がお早いですね。

フィッシュル
えっ?
それだけ?

オズ
そのほうが正しいのです、お嬢様。
フィッシュルは、断罪の皇女ですが、いつもそうであるとは限りません。
時に勇敢で誇り高く、時に臆病で弱いところもあります。
フィッシュルはまさにあなた自身です。
高貴でありながら平凡であり、腕利きの冒険者なのに友達はあまりいない、不思議な王国の皇女殿下。
フィッシュルとは、臆病であって強き者。
他人の戯言を恐れながらも、他人に畏敬されることを強く望んでいるお方。
そして何より…
フィッシュルは常に心の中で自省をし、何度も自分に負けてきました。
ですが、そのたびに立ち上がり、自らの歩みを止めてこなかった人です。
フィッシュルの名にふさわしい人物は、お嬢様を除いて他にいません。
この名は複雑でありながら単純な記号であり、夢と自由の素晴らしさを指しています。
追従する者がいようといまいと、エミちゃんこそがフィッシュルなのです。
フィッシュル――
すなわち、無意識に志言を心の中に書く賢き者。

フィッシュル
…「我が民に自由を与え、古き法則に囚われぬように」。

オズ
幽夜浄土を作って私たちに居場所を与えてくれたこと、また潜在意識に従って『聖国の詠唱』を書き残し、いずれ光が訪れることを信じさせてくれたこと感謝いたします。

オズ
さあ、殿下、暗闇を受け入れ、元の姿に戻りましょう。

幽夜フィッシュル
……

フィッシュル
……

パイモン
うわぁ、ドレスのやつが消えたぞ!
あれ…
また現れた?

モナ
どうやら、影が元の場所、つまりフィッシュルの心に戻ったみたいですね。

フィッシュル
…ふふふふ、来たか、皆の者。

辛炎
お?
この感じ…

フィッシュル
おーほっほっほっ、我が臣下たちよ!
聞こえたかしら、わたくしの呼びかけが!

楓原万葉
うむ、聞こえたでござるよ。

モナ
まったく、元気になった途端、すぐ騒がしくなるんですから。

フィッシュル
オズの言う通り、今日はわたくしが真の心を取り戻し、幽夜浄土へと再び君臨する偉大なる刻。
今を以て宣告する――
――夜浄土へようこそ!

パイモン&辛炎&モナ
めでたしめでたし!

ある嵐の夜 少女は図書館の中で
進むべき未来の道を見つけた
少女は自身に言う――
「自らの夢の国を作ろう」
「石を拾って城と町を作り」
「山と海を拓くのだ」
そして 同じ夢を持つすべての魂にこう伝えた――
「すべての非現実的なものに誇りを持て」
「我らはこの世界よりも」
「上にある!」
「なぜなら 金碧に輝く我らが国は」
「小さくも禁忌の楽土である! 」

フィッシュル
(今日は本当に素敵な日だわ。
 自分を取り戻すことができ、真の皇女になれた。 )
(それに幽夜浄土が本当に現れるなんてね。
 とはいえ、心の中に潜むネガティブな感情が消えないことは理解してる。 )
(大丈夫、この弱さを抱えながらでも戦っていける。
 だって、わたくしはもう気付いたから、手にしたものがこれほど特別で素晴らしいものだってことを。)

パイモン
フィッシュル、外の劇場が完成したみたいだぜ。
見に行かないか?

オズ
パイモン殿、どうかお言葉にご注意ください。

パイモン
お、おお!
わかった。
皇女殿下、よかったら見に行ってみないか?

>ぷっ…

フィッシュル
コホン!
臣下の身でありながら、栄光ある偉大なこの皇女のことをあざ笑ったのかしら?

>あざ笑ったわけじゃない。
>あなたが元気になってよかった。

フィッシュル
…ふふっ、ええ!
今日は幽夜浄土にとって記念となる日、思う存分楽しみましょう。

オズ
ふむ、お嬢様がおっしゃりたかったのは、皆々が持てる限りの熱意を捧げ、夜の聖地がこの世に降臨することを祝そう…

パイモン
いいから、フィッシュル語に逆翻訳しないでくれ…

モナ
…あははっ…
このような国でしたら演劇もきっと面白いでしょうね。
私が気になる謎も、もうすぐ解けそうです。

パイモン
そうだ!
オイラたち、まだやり残したことがあったよな。

じゃあ、皇女殿下にオズ、またあとでな。

オズ
承知しました。
また後ほど。

パイモン
もう一回、吟遊野郎に連絡してみようぜ。

>そうだね。

ドド通話機
ドドコ――
ドドコ――ドドコ――

???
もしもし。

>この声…
 聞いたことない。

パイモン
あれ?
吟遊野郎じゃないのか?

>あの、誰ですか?

???
そっか、私たち会ったことなかったわね。
島の外にいる人と連絡したいんでしょ?
でも、今はまだダメ。
だから、あなたの通信を遮断させてもらったわ。

パイモン
えっ!?

???
人に聞くより、まずは自分で調べて答えを見つけたほうがいいでしょ?
「深き夢」を表す不思議な幻境は、人間の心の本質を映し出すものなの。
自分の目ですべて見極めてみなさい。
物語が終わった時に、また感想を聞かせて。

>…通信が切れた。

パイモン
おい、今の誰なんだ!?
おかしいぞ、なんで今の人、オイラたちと吟遊野郎の連絡を遮断できたんだ…?
それに、どうしておまえの感想を聞きたいんだろう?
うぅ…
ダメだ、オイラにはまったく意味がわかんないぞ!

>私にも理解できない。

パイモン
なんか怖くなってきたな。
で…でも安心しろ、どんなことがあってもオイラがおまえを守ってやる。
ずっとそばにいてやるからな。

>うん。
 この件は一旦内緒にしておこう。
(さっきの人の言葉に悪意はこもってなかった。
 でも、何か詮索されていたような気がする。)
(私から何の答えを得ようとしてるのか分からないけど、その前に…
 すべての物語を見届けないと。)

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フィッシュル
オズ、とにかく…
その…ありがとう。

オズ
お嬢様、私は責務を全うしたまでです。
お嬢様に仕えることができ、光栄に思っています。

フィッシュル
では、あなたに劇場へ同行する栄誉を与えるわ。

オズ
お嬢様の仰せのままに。

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辛炎
フィッシュルのやつ、あの反論はなかなかだったな!
まるで劇の一幕みたいで計り知れない力を感じたぜ。
邪魔にさえならなけりゃ、燃え盛るような伴奏をつけてたかもしんねぇ。
みんながまた集まって、劇場も完成した。
この感じ、最高だよな!
せっかくの機会だ、思いっきりはっちゃけようぜ!

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楓原万葉
「帰郷の途 啼く夜鴉が 空をゆく…」
ふむ…
幻境の概念はまったく異なっておるが、ある種の共通性が秘められているように感じるでござる。
…よし。
下の句は――
「雨降り止みて 虹を残さん」にしよう。

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モナ
フィッシュルの矛盾は「自我」にあります。
でも、幻影が一つしかないという前回の推測は、少し強引だったようですね。
幸い、あの劇を観た後、彼女はようやく自分と和解することが出来ました。
まあ、「宮廷大魔道士」の肩書きは、しばらく取れそうにないですけど。

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>≪いにしえの蒼星