極夜幻想劇・剣を持つ王女!

2.8 修正(画像/書体/吹出)

◆暮夜劇団団長

偉大なる皇女に忠誠を誓う民は、すべての来訪者のために特別に、愛と勇気の物語を披露した…

暮夜劇団団長
いらっしゃい!いらっしゃい!
ようこそ!
君があの名高き蛍か!
それに最高の仲間――
パイモン閣下!

パイモン
わぁ!
なんでオイラたちの名前を知ってるんだ?

暮夜劇団団長
島の賓客のことくらい、知ってるに決まっているさ、何故なら私は…!

パイモン
おまえは?

暮夜劇団団長
私こそ、名高き暮夜劇団の団長さ!

>名高さを自称する人もいるんだね。

パイモン
名高きって言われても、聞いたことないぞ。

暮夜劇団団長
構わん構わん!
今知ってくれたんだからな!
念入りな準備を終え、ついに私たちの舞台劇――
「剣を持つ王女」が初演を迎えた!
劇は五幕で構成され、それぞれ前半と後半に分かれている…
いいところに来てくれたな!
どうぞかけてくれ、序幕がじきに始まるぞ!
さて、舞台裏にてまだやることが残っているので、私はこれで失礼するよ。
暮夜劇団が全力をかけて演じる舞台劇、いざ開幕!
とくとご覧あれ!

…舞台劇のプロローグを終える…

傍白
人の夢は黄金に値する。
そう聞いた悪龍が夢を食い尽くすため王国にやってきた。
夕餉は青物か肉か?
ちょうど王と姫は言い争っていた。
両方とも召し上がればいいのにと、姫の最も忠実な侍従は考える。
しかし所詮、無名の者。
誰も彼の考えなど気にしない。
悪龍が来たのはそんな時だった。

悪龍
黄金の夢一体どんな味がするんじゃ?
おっと。
王宮の地面は凸凹じゃ、危うく着地に失敗するところじゃった。
おお…
よいぞ!
たまらん!
小さき人に、大きな夢!
満腹の予感じゃ!

国王
悪龍!
なにゆえこの地へ!?

悪龍
悪龍?
礼儀がなっとらんな。
ワシのように先見の明を持つ龍は、「善龍」と呼ぶべし!
同族は財宝に目がないが、それよりも価値あるものを見つけた。
すなわち、人の夢じゃ!
空腹だろうとなかろうと、人は心に夢を作り続ける。
実に不思議じゃ。
夢は黄金よりも価値あるものだと、人は言う
「黄金よりも価値あるもの」がワシを満腹にできるかどうか、一日かけて見極めよう。
空腹のせいで、目つきが悪くなる。
はよ食わせい。
小さき王、汝と家族の命が惜しくば、定刻通りに犠牲を捧げよ!

国王
凶星の如きその目は、腰抜けと勇士も見分けられぬ、飾り玉か?
気高さと夢は余が一生をかけて追求するもの。
これしきの脅威のためには捨てぬ。
去れ、悪龍よ!
渡すものなど微塵もないわ!

悪龍
なかなかの勇気じゃが、よく考えてから発言したほうがよいぞ。
犠牲と滅亡を天秤にかけて、また決断を下すがよい。
ふぁ〜、ワシは郊外で眠るとしよう。
日没までに住き肴を捧げよ。
なければ、直々にゆく。
ただしその時、正殿は石窯となり、王宮は食堂となる!

傍白
悪龍は王宮を去った。
郊外で一休みしながら、王の晩餐を待つのだ。
威厳ある王は屈することなく、部隊を作り悪龍を倒そうとしていた。

王国を守るため、夢喰いの悪龍を私が打ち砕きます。

国王
娘よ!
己の身分を弁えなさい!
姫なのだぞ、わがままは通らぬ。
戦場はぬしの居場所ではない、王宮の寝室にいよ。

陛下の教えなのに――
気高さと夢を諦めぬことを忘れたのですか!
私は姫であり、戦士でもある。
王国の民と苦楽を分かち合わねば!
悪龍が迫る中、高みの見物をしていられませぬ。

国王
戦士である前に、姫であろう。
娘を危険な目に遭わせる父親はどこにもおらぬ。
それにほんの数年前まで、ぬしはまだ…。

忠実な侍従
コホン!
陛下、ご安心を!
必ず姫様を守り抜いて見せます!

国王
功績も名声もないぬしの言に、どうして安心できようか?
仕方ない、王国の名高き勇者たちを姫に同行させるとしよう。

傍白
王国の名高き勇者は、三名とも腕利きで武勇に優れていた。
彼らは城外で、順番に殿上の時を待っていた。
偉業の作り手、武勇に名高き英傑――
勇者甲。
数ある功績と、冒険譚は万人に謳われている。
ろう者を除けば、王国に彼の名を知らぬ者はいない。

勇者甲
友よ!
俺の功績を知らない?
じゃ、耳を澄ましてよく聞けよ!

傍白
優柔不断で慎重すぎる策士――
勇者乙。
しかし彼は、幾度も危難を乗り越えてきた。
及び腰との批判もあれば、思慮深いとの賞賛もある。

勇者乙
さ…策略で勝てるなら、正攻法など無駄。
良計は、一朝一夕には成せない…
お…恐れているだと?
わ、私だって、百戦錬磨の勇者なんだぞ!

傍白
経験豊富な龍殺しの宗匠――
勇者丙。
「龍殺しなんか野菜を切るより簡単だよな…
 って、俺だけ?」
彼は過去の戦利品を並べながら、その伝説を詳しく語る。

勇者丙
見ろ、この貴重なマントには長い物語がある…

傍白
勇者たちはみな、闘志満々の様子である。

凝った肩書きね。
一体どんなこだわりなのかしら?

忠実な侍従
最近は、本の中の肩書きで名を彩るのが流行りのようです。

へえ、知らなかったわ!
私の見識不足ね。

国王
よく来たな、勇者たちよ!
困難と危険に満ちた旅になるが、武運を祈る!

勇者甲
過去の勝利に誓って、今日も必ず、成功を姫様に捧げよう!
俺がいれば心配いらない。
悪龍ごとき、朝飯前だ!

勇者乙
…あ、悪龍など恐るるに足らず!
策を立てれば、悪龍は長居を恐れてすぐ立ち去るでしょう。

勇者丙
どっちも一理あるけど、お手並み拝見のチャンスはないかもな。
俺が無数の龍を殺してきたのは有名だろ。
悪龍も、恐れてとっくに逃げたんじゃないか。

傍白
こうして姫は忠実な侍従を連れて…
三人の武勇名高き勇者と共に、すぐさま悪龍討伐に赴いた。

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メッセージ
「悪龍はその場にいたのに、どうしてそのまま食べなかったんでしょう?」

返事
「すぐ手に入れられるものは悪龍の美学に相応しくないからな!
 まずは期待し、それから耐え忍ぶ。
 悪龍は黄金のような夢への欲望が頂点に達するまで待つのだ…」
「…想像してみてくれ、そうして悪龍が味わう夢は如何ほどの美味しさだろうか!」

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…劇団の団長と会話する…

偉大なる皇女に忠誠を誓う民は、すべての来訪者のために特別に、愛と勇気の物語を披露した…

暮夜劇団団長
蛍にパイモン閣下、いかがでしたか?
ぜひご感想を!

>面白かった。

暮夜劇団団長
それは何より!

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>まあまあかな。

暮夜劇団団長
ふむ、改善の余地があるってことかな…
書き留めておこう…

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暮夜劇団団長
とにかく!
まだ四本の舞台劇が島で上演される予定だ!
皆の力を結集して作り上げた舞台を、とくとご覧あれ!
終幕前の三幕、好きな方を選んで観てくれたまえ!
三幕を見終わった後に、終幕の大決戦が開演する!

>うわぁ…

乞うご期待!

パイモン
まだ四幕あるらしいぜ。
島で舞台を見かけたら、観に行くか?

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看板
待ちに待った「剣を持つ王女」の終幕がまもなく上演!
乞うご期待!

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劇団のスタッフ
あっ、劇場はまだオープンしていませんよ。
ご用なら、団長に聞いてください。
えっと…
団長は今、一番高所の王宮です。
なので、もし何かあれば、そちらへどうぞ。

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…舞台劇のインタールードを終える…

傍白
郊外にあるとっておきの湖畔。
そよ風と緑の前には、心まで爽やかになる。
悪龍はここへ降り立ち、一休みすることにした。

悪龍
遠くの城は、木にとまる小鳥のようじゃな。
小人は晩餐を用意してくれたじゃろうか?
真昼の地面は熱すぎる。
日陰に移ったほうが良さそうじゃの
美食のためにはるばるやってきたが、用事を言いつけたら腹が減ってしまったわい。
もしやつが応じなければ、堪忍袋の緒も切れてしまうやもしれんな。

傍白
こうして木陰で休んでいると、向こうから商人のような男が慌ただしくやってきた。 

商人
クソッ、騒がしいやつのせいで、大して商売しないうちに店じまいだ!
行商人とはいえ、長い道のりを生きてきたんだ。
なのに、あれがこの国のおもてなしってわけか?
あの大声のやつ、とんでもないぜ。
長年商売をやってきて、あんな理不尽な買い手は初めて見た。
値段が高けりゃ涙ながらに「たかられた」、値段を安くすりゃ「商品の品質が悪い」ときた。
どこかの目利きかと思って値切ってやったが結局弄ばれただけじゃないか!
物を買う気なんか最初からなくて、買い物って「挑戦」にただ負けたくなかったんだ!

傍白
商人が毒突いていると、またご立腹の人がやってきた。

冒険者
ツイてない!
悪龍を追いかけなきゃなのに、訳の分からんやつの相手をする暇はないんだ。
冒険者として悪龍を放っておけない。
あいつ…
思い出しただけで腹が立つ!
やつの肩書きを知らないと言ったら、大きな過ちかのようにしつこく言ってきて。
その上、悪龍を追っても無駄だ、勝ちたいだけかなんて言って、僕を侮辱したんだ。

勇者甲
悪龍、出てこい!
無意味な抵抗はやめろ!

商人
この声!
やつだ!

冒険者
きっとやつだ!

悪龍
騒がしい小人じゃ。
姿も見んうちに、気分を害されるとはの。

傍白
猛暑にも負けぬ勢いで悪龍を追いかけてきたのは、武勇に名高き英傑であった。

勇者甲
ハッ!
俺は随分有名みたいだ。
悪龍でさえ、怯んで魂が抜けたらしい。

悪龍
小人のくせに大口を叩きおる。
善龍も放っておけんのう。

勇者甲
やっと現れたな悪龍!
探す手間が省けたぜ!

悪龍
気揚々じゃが、汝の夢はいかなるものか、垣間見てやろう。
ふむ――

勇者甲
悪龍、なぜ黙る?
さては、俺の夢が偉大すぎて、呑み込めないんだな。

傍白
名高き英傑と悪龍が対峙していると、心配した姫様一行がようやく辿り着いた。
無名の侍従も戦場に目を光らせ、英傑の言葉に闘志を掻き立てられていた。

忠実な従者
恐れなどないようで、羨ましい。
私にも勇気を示せる機会があれば…

勇者甲
おい、悪龍!
話すのも怖いのか?
この期に及んで怖気付いたか!

悪龍
この夢は大きく見えるが空虚じゃ。
心配せずとも、悪…
善龍であるワシは、食すかどうか迷っておるだけじゃ。

勇者甲
口さがないやつめ!
敵に回っただけで、よくも俺を貶してくれたな!
尊敬できる相手だと思っていたのに、こんなに陰険な策に出るとは。
英傑である俺は、決してお前の好智に屈しない。
悪龍よ、恥を知れ!

傍白
彼の熱弁に、姫も今まで押し殺してきた心の炎を抑えられなくなった。

平和な寝室にはとうに飽いた。
いつになれば、最前線で共に戦えるの?

悪龍
反論が面倒だっただけじゃが、善龍たるワシは追い詰められんとしている。
前菜を食べ過ぎると食欲が減るが、こだわらずともよいじゃろう。

傍白
そう言って悪龍は英傑の夢を丸呑みにし、みなを驚愕させた。

悪龍
思った通り、サクサクとして、食感だけは最高じゃ。

英傑があっさり倒されるなんて。
彼は本物でなく、ただ演説に秀でた者だったのね。

忠実な侍従
名声に見合う実力を持っていなかったようです。
虚勢を張れば、いずれ辛酸を舐める。

傍白
悪龍の腹は満たされず――
一行はただ彼の飛び去って行く姿を見送った。

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通行人
おや?
芝居をしてるのか。
でも私は関係ない、急いで帰らないと。

あれ?
舞台になんだ?
…あっ!
妻が、私の帰りと夕食を待ってるんだ!

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メッセージ
「勇者甲の声がデカすぎて、舞台に登場した時はびっくりしたよ!
 恐らく、客席の後列にまではっきり聞こえたんじゃないか…」

返事
「役者へのお気遣い、痛み入る。
 でも心配する必要はないさ。
 何故なら、劇団は彼のケアをすでに用意したからな!」

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傍白
姫様一行は悪龍の追討を誓い、郊外にやってきた。
忠実な侍従が先頭で、文句も言わず宗匠の荷物を運ぶ。
自称、百戦錬磨の「龍殺しの宗匠」は彼を見下すが、侍従はそれを受け流す。

忠実な侍従
無数の龍を殺めてきた彼に対し、私は無名の侍従。
荷運びくらいしかできません。
石の中のこの剣は秘宝中の秘宝。
選ばれし英雄にしか操れません。
百戦錬磨の龍殺しの宗匠が、剣で悪龍をどう裁くのか、実に見物です。

傍白
その時、村で一休みしようと悪龍が舞い降りて来た。

悪龍
どれどれ、黄金の夢はどこじゃろうな?

勇者丙
悪龍よ。
俺の肩書きを知るならば、さっさと去るがいい!

悪龍
使い古された決まり文句じゃの、笑ってしまうわ。

勇者丙
俺は見識があるから、大目に見てやる。
だが、気を付けろ。
俺が真の力を見せた時、後悔しても遅いからな。

悪龍
ははっ、実力もないくせに、大口を叩きおる。
真の実力があるならば、善龍たるワシに見せてみよ。

傍白
そこへ、尊いお方も足跡を辿ってやってきた。

悪龍を王国から追い出すのは、私の役目。

勇者丙
尊い姫様よ、悪龍に挑む許可をくれ。
幾度も戦い、宝を手にしてきた俺にとっちゃ、お安いご用だ。

許します。
凶暴ですから、どうか気を付けて。

勇者丙
谷に潜む毒龍を倒したときの財宝から、一番貴重なのを選んできた。
このマントがあれば、誰にも俺が見えまい。
人混みの中から、奇襲されようとしてるとは思わねぇだろ!

悪龍
強いのかと思いきや、無意味な潜伏とは。
もしやこれは茶番か?
臆病者が逃げようとしておるだけやもしれん。

傍白
透明マントで隠れた彼を――
誰が慧眼で見つけられるのか?

勇者丙
よくも俺の名声を汚してくれた。
熟練者に、恐れるものなし!
立ち去るよう促したのに、好意を無にするとは…
流石悪龍だ。
奥の手を使わせて、後悔しても遅いぞ。

悪龍
無駄に頭を絞らずとも、見せるものがあるならばさっさと見せろ。
 
勇者丙
こ、ここじゃ不便だ。
向こうでな!

傍白
悪龍は何も言わず、笑ったのか、笑わないのか――
ともかく、彼に同意した。
悪龍はすぐに、宗匠が指定した場所へ降り立つ。
姫様とその忠実な侍従も、小走りで後を駆けてきた。
宗匠は逡巡する…
何か、策を練っているらしい。

勇者丙
…悪龍よ、見せてやろう。
龍殺しのやり方を!
氷原を越え、山を登り、秘境に潜り、強欲な龍を討ち…
俺は、真の英雄にしか握れない唯一の宝剣を手に入れた。

勇者丙
察するならばこの場を去れ。
さもないと、鋭利な宝剣は龍の鱗をも貫くぞ。

悪龍
ははははっ、小賢しい真似を。
小人よ、無駄な努力はやめい。
ワシは躱さんし避けんぞ。
剣を抜いて、思う存分斬ればよい。

傍白
野次馬の村人たちは珍しがった。
腕が鳴り、正体を確かめんとする者もいた。

傍白
立ち向かう農民――
農具に慣れた手は、果たして剣の柄を握れるだろうか?

農夫
体力と気力なら、王宮のやつらに必ずしも劣らない。
はっ!
ダメだ、力には自信があったが、こいつは無理だ。

傍白
渾身の力を込めても、石の中の剣は微動だにしなかった。
姫様と忠実な侍従はそれぞれの理由で、挑戦を見送った。
黙って見てきた悪龍も、遂に我慢の限界に達す。

悪龍
はぁ、口争いにはもう飽いた。
いつになれば、真の腕を見せてくれるんじゃ?
先延ばしせずに、今すぐ剣を抜くがよい!

勇者丙
りゅ…
龍殺しの宗匠は、言いなりになどならない。

悪龍
熟練の龍殺しなんぞ、どこにおる?
口だけは確かに他より回るがの。
宗匠などと笑わせおって。
そこな子供に聞けばよい。
汝のことを見抜いておるわ。
傍白
悪龍の言う通り、小人の小人も、鎧の下の本心を見抜くのだろうか?

子供
歌の中の悪龍だ!
思ったより大きい!
…でも怖くないよ!
ピカピカの鎧、なんで震えてるの?
そんなに口を開けてるのに、何も話さないの?

悪龍
間食は本意ではないが、せっかく届いた菓子に手を付けん道理はないのう。

傍白
悪龍は大口を開けて、龍殺しの宗匠の夢を呑み込んだ。

悪龍
チッ、思った通り、腐り果てた夢は理想的なとは言えぬ。
こやつの夢は腐ったリンゴ、喰うても歯が浮くだけじゃ。

忠実な侍従
あっ!
宗匠が負けてしまいました。

戦いの話はただの自慢だったのね。
饒舌は彼を救わなかった。

傍白
夢を失った、無力な「龍殺しの宗匠」だけを残して、悪龍は飛び去った。

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通行人
おい、飽きてきたぞ!
早く戦えよ!

な、なんだ。
なぜ私が舞台に?
皆どうして私を見てる?
あっ――

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メッセージ
「石の中の剣は何故抜けなかったんだ?」

返事
「やあ。
 こちらはうちの劇団の道具だからね。
 勝手に持ち出されたら困るだろ。」

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>剣を抜いてみる

しかし、何も起こらなかった。

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アーノルド
はぁ、舞台楽しそうだな。
僕もあそこに立てたら…

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傍白
飛び去った悪龍は、城門近くで休むことにした。

悪龍
昼間なのに、守衛がおらん。
死を恐れたんじじゃろうか。

傍白
悪龍が堂々とここで休んでいると、すぐに姫様一行が追いついてきた。
最初に悪龍を見つけたのは、最前列で道を切り開く忠実な騎士だ。

忠実な侍従
なんて傲慢な悪龍だ。
姫様に近づけないと、私は陛下に約束した。
旅立ちの時、自信満々だった策士なら、良い手があるかもしれない。
何せ、どんな困難や危機も、無事に乗り超えてきたらしい。
無謀な者は無謀ゆえに損失を受けた。
お考えの深い策士こそ、知恵を持つはずだ。
万全な策がないまま、悪龍に挑むべきじゃない。

傍白
忠実な侍従は気を抜かず、見た情報を他の者に囁いた。
「悪龍が休んでいるうちに、じっくり策を練りましょう」。
すると、姫は悪龍を起こさないよう、そっと近づいた。


策士の言はもっともね。
無謀な戦いをしてはいけない。
あなたが悪龍に気づいたおかげで、主導権を握れるわ。

忠実な侍従
もったいないお言葉です。
責務を全うしただけですから。


いいえ、賞罰を公平に与えるのは当然のこと。
名誉を謙遜する必要はないわ。


策士が着いてきませんね。
よろよろと歩いて、何か困りごとかしら?

忠実な侍従
悪龍の災いを鎮める、いい案があるそうです。
良策が多すぎて迷っているのやも。

傍白
しかし何を言っても慎重な策士は無言のままで、冴えない表情をしていた。

忠実な侍従
勇者さま、悪龍はすぐそこ。
どうか妙策をご教示ください。

勇者乙
…み、妙策?
よ、予想した状況とかけ離れていて、策の修正に時間がかかりそうだ…

悪龍
ははっ!
構やせん、夕方まで、策を練るには十分な時間じゃろう。


悪龍が喋った?
狸寝入りで、私たちが引っかかるのを待っていたのね!

勇者乙
あっ!

傍白
勇者乙はすっかり怯えて、慈悲を乞うように地面に突っ伏した。
そして「ごめんなさい」と呟くと、躊躇なく城門へと逃げて行った。
姫と忠実な侍従は慌てて後を追い、残された悪龍は失笑してしまった。

悪龍
国王ときたら、散々抵抗しおると思ったが、なんとも愉快で腹いっぱいじゃ。

傍白
忠実な侍従に逃げた策士を探させ、姫は悪龍の監視に戻った。


まさか策士は口だけで、役立つ策なんて出せないの?
ならどうやって国の平和を守れば…
奇襲で討伐できたはずが、今はあちらが鋭気を養って待ち伏せている。
策士が逃げたせいで、私の侍従も後を追っているわ。
守衛のいない城の門は開け放たれて、無防備な姿を晒している。

傍白
遅れて来た老練な守衛は酔っていたが、足取りはしっかりしていた。

老練な守衛
…ヒック。
酒池肉林に女、平和な時代は実に良かった。
裕福な家の偉いやつらは、俺たち小者の苦労なんざ知る由もない。
何が悪龍で策士だ、でたらめに過ぎんさ。
目も耳も衰えて、手は震えるし腰も痛い。
絶対に俺の出る幕じゃないよな?

傍白
若い守衛が小さな「教え」を受けたが、王国を守りたい気持ちは変わらなかった。

若い守衛
姫様のために!
あの悪龍を許さない!
策士は尻尾を巻いて逃げ出すし、酔っぱらいの先輩も信用できない。
僕しかいない!
前線に立って、危機に瀕した王国を救い…
救い…
うっ…腹が…
まさか…!?
駄目だ!
我慢できない!

傍白
あっ?
逃げた…
変なものを食うなと散々言ったのに、やっぱりお腹を壊して!
劇はまだ終わっていないのに!
誰か代役を探さないと…

パイモン
えっ?
守衛が逃げたぞ!
劇がまだ終わってないけど…
代役を探すなんて…
うぅ、オイラたちも探してみようぜ?
パイモン
あっ!
あそこに守衛がいるぞ。
彼に聞いてみようぜ。
あの、逃げ出した劇団の役者を見てないか…

アーノルド
ああ、見たよ!
あのバカ!
こんなに素晴らしい舞台への出演をふいにするなんて!

僕はな!
うぅ…
僕だって出演したかったのに。
だけど、チャンスがなくて…

パイモン
なら、今がチャンスじゃないか!

>ちょうど逃げた守衛の代役が必要だ。

アーノルド
えっと…
劇団の稽古は見たことあるけど、やっぱり本物の役者じゃないし…

パイモン
けど、おまえは本物の守衛だぞ!
逃げたやつは「前線に立って」まで言ったのに…
急にいなくなっちゃったんだ!

>これじゃ、「王国を救う」人がいなくなる。

パイモン
そんな!
舞台劇を観賞する観客の願いを守るのも、守衛の役目だろ?

アーノルド
えっ?
でも…

パイモン
これはおまえの念願の出演チャンスだろう?
みんなが待ってるんだ、迷ってる暇はないぞ!
早くこいつを連れて行こうぜ!

「若い守衛」
この流れなら、こうかな…
悪龍よ!
僕の挑戦を受け入れろ!

悪龍
はははっ、よいぞ!
その腕、善龍たるワシに見せてみよ!

傍白
激戦の幕が切られたところに、忠実な侍従がやっと戻って来た。

忠実な侍従
策士が見つからず…
血気盛んな若者が不覚をとっていませんように。
あっ、一歩遅かった!
私は姫様を守らねばならないのに!

傍白
嘆いても遅い。
すでに悪龍は彼に興味を持ってしまっていた。
無謀な行動に出た守衛の夢を、悪龍はいとも簡単に呑み込んだ。

「若い守衛」
うぅ…
普段から自分の力を見極めていれば、こんな結果には…

悪龍
腹を満たすほどではないが、満足できる前菜じゃ。
量は寂しいが、味は称賛に値する。
食前の楽しみがこれほどあれば、晩餐はさらに美味になるじゃろう。

傍白
悪龍はみなの叫びに耳も貸さず、舌鼓を打って城門から飛び去っていく。

…劇団の団長と会話する…

暮夜劇団団長
賓客よ!
お待ちを!
これまで四幕をご覧になったでしょう。
楽しんで貰えたかな?
終幕の舞台がついに幕を開ける!
ああっ!
ドキドキワクワクが止まらないね!
舞台裏でまだ仕事があるので、同行できないことを許してくれたまえ…
それじゃ、また終幕の舞台で会おう!

-------------------------

メッセージ
「アーノルドがついに舞台に立つなんて。
 セリフは少なかったけど、おめでとう!」
返事
「アーノルドに拍手!」
「観客の皆も、普段から食生活には気を付けてくれ!
 皆が元気に食欲旺盛でいられるよう祈ってるよ!」

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…舞台劇のフィナーレを終える…


西に太陽が沈み、東に弦月が昇ろうとしている。
期限が迫る中、私はまだ旅の目的をなし終えていない。
名高き勇者たちは、ついに現状を変えることはできなかった。
出発前、私は自ら悪龍を討伐すると誓った…
なのに今になって、この誓いが人に笑われないか心配している…

忠実な侍従
姫様が役目に悩んでおられる。
忠実な侍従として、悩みを分かち合わねば。
私は肩書きすらありません。
王宮にいられたのは、姫様の重用のおかげです。 
勇者についてはともかく、姫様のお人柄や勤勉さはよく存じ上げています。

忠実な侍従
姫様、どうかご自分を軽蔑しないでください。
これを機に、「勇者」たちの過ちを考えましょう。


その言葉、一理あるわ。
彼らの言動を思い出してみましょう。

傍白
中身のない身の程知らず…
口ばかりで結果も出せなかった者…
姫は思い出した。

勇者甲
俺は英傑を自称していたが、実はただの身の程知らずで――
それを見抜かれた。
強敵に対峙できる実力などない。
だが、脆い沽券も捨てがたかった。
口が悪い?
ただ、他人に舐められるのを怖がっていただけだ。


悪龍の言う通り、英傑の夢は見掛け倒しだったわ。
度胸はあったけれど、見合う実力を持たなかった。

傍白
万全の策があると誓っておきながら、戦いで逃げたしたのは誰か?
姫は思い出した。

勇者乙
保身のために役目を他人に投げ、逃げることしか考えてなかった。
妙策が思い付くと思ったが、「どうやったら逃げられるか」しか考えられなかった。
危機を乗り越えてきた?
…毎回、恥知らずにも仲間を見捨ててきたことをみな知らなかっただけだ。


策士の彼に、策は一つもなかったわ。
危機を前に、責任を全うできなかった。
慎重さは大切だけど、責務を放棄し、危ない橋は他人に渡らせるなんて…
言葉にできないわ。

傍白
大口は叩くが現実を恐れ、過去の栄光を披露するばかりであったのは誰か?
姫は思い出した。

勇者丙
歴戦の収穫は、俺が本物だと証明してくれる。
実力差の大きいやつと戦いたくなかっただけだ。
勇者丙リスクを避けて利をとるのは本能だろ。
もう功績は上げたし、国に命を捧げる理由なんかない。

彼の経歴が本物かどうかはさておき、過去の栄光に縋るのは褒められないわ。
彼の精神はとうに腐り…
気高さと夢を忘れてしまった。
さらに彼はその忘失さえも誇った。
ああっ、彼らは使命を果たせなかったかもしれないけど、私こそ…
決心とこの細剣のみで、どうやって悪龍に立ち向かうと言うのでしょう?

忠実な侍従
私は、姫様のお傍にいた傍観者に過ぎませんが。
高みの見物を決め込む、志だけのお方ではない。
仲間を危機にさらす、薄情者でもありません。
姫様の前向きさと勤勉さ、そして黄金の夢は、私にもはっきり見えます。
私の尊い姫よ、どうかご自分を軽蔑なさらないで。
自分を、自分の夢を信じましょう。
あなたならきっと、悪龍を討ち倒せます!

傍白
約束の時間はもうすぐだ。
悪龍は待ちきれず、「餓龍」と成り果てていた。

悪龍
昼間に「間食」をたくさんしたが、正餐の代わりにはならぬ。
おやつはあくまでもおやつ。
味が違おうとも、腹をひととき満たせるに過ぎん。
それに、美味いとも言えんかった――
むしろ吐くくらいのもんじゃ。
もう黄金の夢しか、ワシを満たすことはできんじゃろう。

傍白
侍従は悪龍を観察するため、そっと近づいた。
敬愛するお方のためなら、恐れることなどない。

忠実な侍従
これは王様との約束のためだけじゃない…
ただ彼女の夢が叶うことを祈っているから。
今の状況では難しいかもしれないが…
あれ?
悪龍の様子がおかしい。
胸を塞いで…
何かを呟いている?
どれどれ…

悪龍
食欲に抗うべきじゃった。
それに、小人を侮りすぎた…
胃の中が狂ったようにもたれて、小人に構う余裕などありはせん。

傍白
忠実な侍従は、大喜びでその情報を姫に伝えた。


今、心は勇気に満ち溢れ、誇りを持って細剣を振り上げられるわ。

忠実な侍従
胸元です!
硬い皮のない、唯一の弱点があります!
この機を逃さず、弱った今こそ討つべきです!


悪龍よ!
王国の平和のため、あなたに挑戦を挑む!
はっ!

悪龍くっ…!
卑怯な小人め!

傍白
こうして姫様の渾身の一撃は、悪龍を討った。
気高さと夢を諦めない限り、世界の扉は開いてくれる。
忠実な侍従よ、今まで着いてきてくれてありがとう。
あなたは決して、無名の人ではないわ。
最近の流行に合わせ、このような称号が相応しいでしょう。

傍白
「絶望も砕け散る漆黒の翼、聖なる裁きを下す侍従」――
無名の者はついに名を手に入れた。
このように、姫は自らの手で悪龍を退治し、王国の平和を守り切ったのであった。
めでたし、めでたし。

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メッセージ
「面白かった!
 でも、忠実な侍従の肩書き、いくら何でも長すぎませんか?」
返事
「やあ。
 それは最近の流行に合わせたものさ。
 君も書籍の中から肩書きを選んだらどうだ?
 例えば…」
「暮夜劇団の情熱的なファン――
 極夜幻想を見届ける者!
 とかね」
メッセージ
「餓龍が弱すぎ。
 あんな弱い餓龍、俺だって一振りで退場させられるかも」
返事
「重要なのは、最初の一歩を踏み出す勇気!」
「…それから、健康を保つことだ!」

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…劇団の団長と会話する…

暮夜劇団団長
うぅ…
劇が無事に終わった…
劇を創り上げた役者たち、そして観てくれた観客の皆さん、ありがとう!
勿論、蛍閣下とパイモン閣下にも感謝する!
君たちの情熱に満ちた視線…
うぅ…
まるで悪龍の灼熱の吐息だった…

>劇の名前って…

暮夜劇団団長
ああ、「剣を持つ王女」だ!

>剣を持ったのは終幕の一瞬だけ?

暮夜劇団団長
まあ…
それは、「三勇者」だって、実は四人いるみたいな感じさ…

>最高の仲間は非常食とも呼べるみたいな…?
>一度も見たことない騎兵隊長の乗り物みたいな…?

暮夜劇団団長
とにかく、重要なのは手に握る剣じゃない!
心に握る勇気の剣だ!
本題にが、劇も無事終わったことだし、せっかくだから蛍とパイモン閣下に劇団の皆と一緒に記念写真を撮ってもらいたいんだ!
さあ、断らないでくれよ!

…劇団のメンバーと写真を撮る…

暮夜劇団団長
皆、準備できたか?
…三――二――
ー!
よっしゃー!

パイモン
わぁ!
おまえ、テンションが高すぎるぞ!


…劇団の団長と会話する…

パイモン
こんな写真になっちゃったけど…
大丈夫?

暮夜劇団団長
大丈夫さ!
記念用なんだから、特別な方がいい!
蛍閣下にパイモン閣下、改めて感謝するよ!
ああっ!
夏!
素晴らしき夏!
楽しい時間はいつもあっという間だ…
終わらない演出のような日々であればいいのに…

≪依頼完了≫

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「暮夜劇団の記念集合写真」

「暮夜劇団」の集合写真が入ったキレイなフォトフレーム。
「剣を持つ王女」の準備を手伝った旅人への特別な贈り物である。
よく練られた脚本は、集中を絶やすことなく、感情を込めて演じる必要がある。
さらには役者の立ち位置も非常に重要だ。
旅人が丁寧に調整したことにより、演出は見事成功し、役者たちから熱い賞賛を受けた。

暮夜劇団団長の手稿

『極夜幻想劇・剣を持つ王女!』の台本。
乱雑な筆跡は団長の注釈と思われるが、中には過激なものもあり、きっと採用されないだろう。

暮夜劇団団長の手稿

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「姫」の演者
まさか主役を演じられるなんて…
皆の足を引っ張ってなかったよね?

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レオン
ちょっとしたハプニングもありましたが…
幸い、芝居は無事に終わりました!
私の出番が多いから、舞台にあがる前は台詞が飛んでしまうんじゃないかと、ずっと心配でした。

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「悪龍」の演者
ははっ、どうだった?
なかなかの演技だったろう?
魅力がほとばしるぜ!
…なに、台詞を噛んだだと?
ありえない、きっと聞き間違いだ…
コホンッ、つまり、それも演技の一部だからな!

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「勇者甲」の演者
コホンッ…
芝居って、喉への負担が大きいよな。
普段はそんなに大声で話さないんだが…

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「勇者乙」の演者
蛍、代役を探してくれたおかげで、救われたよ!
じゃないと、この芝居はおしまいだった。

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「勇者丙」の演者
もう終わったのか…
まだ思い存分遊んでないから、物足りない気もするな。
今後も、こういうチャンスがあればまたやりたいぜ。

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傍白
危うく大混乱になるところだったが、幸い…
結果から言えばなかなかいい芝居だったろう?

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暮夜劇団団長
皆、素晴らしい演技を見せてくれた。
誇りに思う!
こんな仲間と力を合わせて、愛した事業を一緒に頑張れるなんて…
なんて幸せなんだ…