華彩紫庭真説 第一幕・酔いどれ翠庵の怪しき事件/酔いどれ翠庵の怪しき事件

2.6 修正(画像/書体/吹出)

到着時刻表に書いてある時間通りに、離島の船着き場へ行こう。
客人たちの船は明日の朝8時に到着するはずだ。

綾人がくれた時刻表に、船の詳しい情報が載ってるみたいだぞ。
よく確認して、時間になったらお客さんたちを迎えに行こうぜ。

次の日の朝まで待つ(6時~8)
 
「到着時刻表」によると、今日はモンドから船が一隻やってくるみたいだな。
五歌仙を描く画家も乗ってるはずだ。
そろそろ時間だな、波止場まで行こうぜ。
 
船の到着時間になった。
離島の波止場に行こう。

 
離島の波止場に行く…
 
モンドから、稲妻の容彩祭に参加しに来たお客さんだよな?
オイラたちはそのガイドなんだ、島まで案内するぜ。
 
リーア)
ええ。
私たちはみんな、モンドから来た吟遊詩人よ。
 
近頃の稲妻は大きく変わったらしいから、何か詩歌のインスピレーションが得られるといいんだけど。
 
>パイモン、何してるの?
このお客さんたちって、みんな吟遊詩人なんだろ?
だからオイラ、吟遊野郎を探してるんだ。
おかしいなあ、吟遊野郎はモンドじゃ有名なはずだ…
招待されてないわけないよな?
 
>招待されても来ないんじゃない?
パイモンえっ、なんでだ?
 
>だってウェンティの身分は
そっか…
オイラもわかったぞ…
吟遊野郎はもうモンドの管理者じゃないけど、それでも神なんだよな。
もし祭りがあるって聞いたからって、いそいそと稲妻に来たりなんかしたら…
大人げないっていうか、面目が丸潰れだよな。
 
栄誉騎士のお姉ちゃん!
パイモンちゃん!
 
クレー!
おまえも容彩祭に招待されて来たのか?

ううん、招待されたのはアルベドお兄ちゃんだよ。
でも最近、騎士団のみんなはとっても忙しいから、アルベドお兄ちゃんがここの人に頼んでクレーの家族通行証を用意してくれたの。
 
やあ、旅人にパイモン。
稲妻で容彩祭が開かれると聞いて、キミたちに会えるかもしれないと思っていたよ。
 
五歌仙の肖像画を描く人って、アルベドだったのか。
 
どうやら、もう絵のことは知っているみたいだね。
だけど、ボクのここでのペンネームは「白亜」だよ。
そうだ、万国商会はどこか知っているかい?
後で八重堂の編集主任とそこで会う約束なんだ。

万国商会はおまえたちが離島で泊まる場所だぞ。
どうやら目的地は同じみたいだな。
 
それは良かった。
じゃあ早速案内してくれるかい。
 
容彩祭の客人たちには万国商会に宿泊してもらう予定だ。
アルベドも編集主任とあそこで会う約束をしているらしい。
みんなを万国商会まで案内しよう。

万国商会に行く…
 
わぁ、すごく綺麗!
クレー、見たこともないものがいっぱいあるよ!
 
クレー。
あんまり走るんじゃない。
誰かにぶつからないよう気をつけるんだよ。
はぁ…道中、クレーに稲妻の物語を話したのがまずかったか。
そのせいでクレーは、ほとんど睡眠を取っていなくてね。
その上、ここに着いてからも元気が有り余ってずっとはしゃぎ回っている。
 
>子供はそんなものだよ
>元気があるのは良いこと。
 
ふむ…
平山主任がまだ来ていないようだ。
ボクより早く着くと言っていたのに、困ったな。
 
>どうしたの?
実は編集主任と会う約束をしたのは、五歌仙の詳細資料を渡してもらうためなんだ。
資料がなければ、絵の構想もうまくできないからね。
 
稲妻に来るまで、自分がなにを描くのか知らなかったのか?
ボクが知っていたのは、五歌仙という名前だけなんだ。
五歌仙はとても古い人たちだから、現在まで伝わっている内容がほとんどなくてね。
だから編集主任が、ボクのためにもう少し情報を集めてくれることになったのさ。
ボクはインスピレーションさえあれば、すぐに描けるタイプだ。
だから彼がまとめた資料を受け取る日を、今日まで先廷ばしにすることに同意した。
 
その絵って、いつまでに完成させなきゃいけないんだ?
肖像画は祭りのいくつかの段階で一枚ずつ公開していく計画らしい。
一つ目の「翠光」像は、明後日の容彩祭正式開幕より前に完成させないといけない。
 
明後日!?
それって時間的に厳しくないか!
別にそうでもないさ。
娯楽小説の挿し絵を描いた時なんて、原稿を船で送らないといけなかったから、今よりよっぼど厳しい状況だった。
先月なんか『沈秋拾剣録』最新刊の容彩祭先行販売に間に合わせるために、最終章の挿し絵は原稿をもらったその日のうちに完成させたほどだったよ。
その挿し絵は、稲妻に着くや否や印刷されたらしい。
だからボクは未だに、完成品を見たことがないんだ。
 
うーん…
おまえの創作環境に同情するべきなのか、それともおまえが天才だって褒めるべきか…
 
もちろん可能なら、ボクも出来る限り早く資料を手に入れたい。
そうすれば、より良い準備ができるからね。
 
>そういえば、神子が言ってたけど…
おう、ここ数日は、八重堂の編集者たちは遠国監察の辺りにいるんだったよな。
編集主任もそこにいるかもしれないぜ。
アルベド、おまえをそこに連れていってやるよ!
分かった。
クレー、キミはもう長いこと寝ていないから、ここに残って休んでおいで。
ボクたちは用事が終わったら帰ってくるから。
 
うん。
わかった、アルベドお兄ちゃん!
心配しないで、クレーおとなしくしてるよ!
 
アルベドと約束をした平山編集主任は、時間になっても現れなかった。
彼は遠国監家の近くにいるかもしれない。

遠国監察会場に行く…
 
荒谷)
まったく、こんな時だっていうのに…
小野寺ったら…
休暇で連絡が取れないだなんて!
後で黒田さんと稲妻城に戻り、至急増刷しましょう…
だけどこの小説は需要が高いから、増刷しても足りるかどうか…
 
村田
でも、今日のうちに発覚したのが不幸中の幸いね。
あと何日か遅れてたら、それこそ取り返しがつかなかったわ。
ねぇ…
倉庫にいた怪しいやつ…
あいつの仕業だと思う?
 
黒田
そのことを調べるため、すでに主任が向かっています。
 
なんだ、なにか起きたのか?
 
村田
あら、旅人…
気にしないで、内々の問題だから。
何か用事でも?
平山編集主任を探しているんだが、どこにいるか知っているかい?
 
村田
主任なら港口の倉庫に…
 
黒田
村田さん、お待ちを。
失礼ですが、もしかして五歌仙肖像画を描きにいらした「白亜」先生でしょうか?
 
いかにも、ボクが白亜だ。
 
黒田
私は黒田と申します。
お見受けしたところ、五歌仙の資料についてお聞きになりたいのだと思うのですが…
申し訳ございません。
今しばらく万国商会でお休みになってお待ちいただけますでしょうか。
すぐに主任に連絡して、資料をお届けいたしますので。
 
別にそんなことしなくてもいいぞ。
なんだか忙しそうだし、オイラたちで探しに行くぜ。
 
黒田
そ、それは…
 
もしかして、『沈秋拾剣録』の最新刊に何か問題が起きたのかい?
 
黒田
なっ!
ど、どうしてそのことを
 
キミたちは、編集主任がボクに渡す資料について知っていた。
つまり編集主任は約束を忘れていたわけではなく、突発的な状況に遭遇したということだ。
だけどキミたちは、ボクを「白亜」だと知りながら、編集主任には会わせたくないようだ。
どう考えても、ボクが挿し絵を担当した『沈秋拾剣録』に何かが起こったとしか考えられない。
キミたちは、それを本能的に隠そうとした。
 
黑田
うっ…
はい、恥ずかしながら、確かにおっしゃる通りです…
白亜先生、単刀直入に申し上げます。
本日の朝方、港口の容彩祭倉庫に怪しい外国人がいるとの情報を受け、天領奉行が駆けつけました。
天領奉行は貨物窃盗の恐れがあると、倉庫を借りていたすべての方々に連絡しました。
そして結果…
倉庫にあった『沈秋拾剣録』の新刊がすべて失くなっていたことが分かったのです!
 
ええぇえ、ぜんぶ失くなってたのか!?
 
黒田
シーッ――お静かに!
この小説は容彩祭の最終段階でトリとして先行販売される予定で、しかも作者の枕玉先生も即売会に参加されるのです。
村田
深刻な事態だから、主任はすぐに倉庫に駆けつけたわ。
今、窃盗事件とあの外国人の関連性を調べてるの。
 
なるほど。
確かに『沈秋拾剣録』が予定通りに発売できないのは、とても残念だね。
それに枕玉先生にとっても、本意ではないはずだ。
編集主任は港口の倉庫に向かったと言ったね。
ボクもそこへ行ってみよう、何か手伝えるかもしれない。
 
【行秋を知っている】
そういえば、『沈秋拾剣録』の作者「枕玉」って、行秋のことだよな?
 
ん?
彼を知っているのかい?
 
>前に交流があって。
 
もし自分の小説が失くなったって知ったら、きっと悲しむよな…
オイラたちもアルベドと一緒に探そうぜ。

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【行秋を知らない】
「枕玉」…璃月人の名前っぽいな。
アルベド、この小説の作者ってどんなやつなんだ?

ボクもあったことはないけど、編集から彼の身分は聞いている。
璃月飛雲商会の次男坊だそうだ。

>飛雲商会の次男坊?
>行秋のこと?
ん?彼を知っているのかい?

>前に交流があって。
まさかアルベドが、行秋と一緒に娯楽小説を出版してたなんてな!
でも今は驚いている場合じゃないぞ。
もし行秋が、娯楽小説が失ったって知ったらきっと悲しむよな…
オイラたちもアルベドと一緒に行こう。

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『沈秋拾制録』の最新刊が消えた。
平山編集主任も問題の意庫に行ったらしい。
あそこに行って状況を調べよう。

 
波止場の近くにある倉庫に行く…

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村田
荒谷さんと黒田さんは、稲妻城へ戻って『沈秋拾剣録』の増刷手配をしているわ。
私はここで暫く待機することになったの。
もちろん、小説が見つかればそれが一番いいんだけどね…
最悪の状況にだけはならないでほしいわ…
 
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九条裟羅
……
 
ウェンティ
……
 
えぇええ!
おおお、おまえ、なんでここに!?
 
天領奉行の公務を執行しているのだ、私がいるのは当然だろう。
 
いや、裟羅のことじゃなくて——
吟遊野郎、倉庫にいた怪しい外国人って、まさかおまえのことだったりしないよな!
 
えへっ、ごめんね、結果から見ると…
確かにボクのことみたい。
 
そこの容疑者、言ったはずだ。
窃盗と密航の疑いが晴れるまで、勝手に口を開くな。
 
旅人、パイモン。
お前たちはこの自称吟遊詩人のモンド人を知っているのか?
 
>関係がまったくないとは言えない
>相当よく知ってる人…
裟羅、オイラたちが知る限り、こいつはたぶん窃盗と関係ないと思うぞ。
でも…
「密航」ってどういうことなんだよ!?
 
この者は容彩祭の客人であると自称しているが、招待状を持っていないんだ。
ゆえに我々は密航を疑っている。
何しろこの者を見つけた場所は、セーリングブリーズの蒲公英酒を保管している貨物の中だったからな。
 
>少し彼に話を聞いてもいい?
事件解決に有益なことであれば、別に構わない。
 
吟遊野郎、おまえ…
まさか本当に密航してきたのか…?
 
ええ…
久しぶりの再会なのに、会って早々疑いの眼差しを向けられるなんて。
あーあ、前に君たちも同じような方法で稲妻に着いたって聞いたから、てっきり分かり合えると思ってたのに。
 
「同じような方法」?
 
>昔のことはもうよそう!
>私たちは仕方なく…!
あははっ、冗談さ。
安心してよ、ボクに招待状を送ってくれたのは社奉行の神里綾人。
こんな情報を知っている人が、密航者である可能性は低いでしょ?
 
でも…
だったらなんで、吟遊詩人たちの船に乗ってなかったんだ?
 
もちろん、招待状をもらってから、早く稲妻に着きたかったんだ。
ちょうど蒲公英酒を運ぶ貨物船に出くわして、彼らと一緒に出発したんだ。
船長とすごく気が合っちゃって、途中で美味しいお酒をたくさん奢ってもらったんだよ。
多分だけど、蒲公英酒と稲妻のお酒を飲み比べているうちに、貨物の中で寝ちゃったのかもね。
それで目が覚めたら、この倉庫にいたってわけ。
で、そこの天領奉行の大将さんが虎視助々と木箱の上からボクを脱んでたんだ。
 
たしかに吟遊野郎の言ったことは真実味があるけど…
でも、なんか…
 
>「大人げない」
>「面目丸潰れ」…
 
平山
すみません、私は被害に遭った八重堂の者なのですが、いくつかお聞きしてもよろしいですか。
先程あなたは、ずっとこの倉庫にいたと仰いましたよね。
でしたら何か怪しげな物音を聞きませんでしたか?
そういえば、確かに周りで足音がしてたような気がそれも一回じゃなくて何回もね。
でも、ボクは別に変だとは感じなかったよ。
平山
音がしたのに、変だと思わなかったのですか?
ふむ、なるほど。
アルベド、なにか分かったのか?
窃盗と間けば、鍵をこじ開けたり、物を粗探ししたりする行為を連想するはずだ。
だが、今のウェンティの話は、このような明らかに不自然な物音は聞いていないという意味だろう。
それにここは倉庫だから、毎日大量の貨物が出入りしている。
足音が聞こえるのも、至って自然なことだ。

平山
つまり…
紛失の件は手がかりなしということでしょうか…?
 
いや、そうとは限らない。
さっきの事実から、少なくとも三つの結論を出すことができる。
一つ、小説を盗んだのは気まぐれな盗賊ではなく、初めからそれらを盗もうと企んでいた者。
二つ、犯人は倉庫に非常に詳しく、鍵を持っている。
三つ…
 
>犯人は一人じゃない。
さすがだね。
小説はとても重いから、単独犯が短い時間で運ぶのは難しい…
きっと仲間がいるだろう。
ウェンティは明らかに犯人の特徴と異なる。
 
うむ、その推論に賛成しよう。
平山編集主任、天領奉行は引き続き倉庫の関係者を調査する。
もし何か手がかりを手に入れたら、すぐに我々のほうまで届けてくれ。
 
平山
はい、分かりました。
よろしくお願いします…
 
あはは、じゃあボクもこれで。
 
待て。
確かに窃盗の疑いは晴れたが、合法的な手段で稲妻に入国したかどうかの結論は出ていない。

あちゃー、残念。
さっきみたいに誤魔化せると思ったのにな。
 
裟羅はすごく厳しいからな。
吟遊野野郎、招待状はあるのか?
 
えへっ。
ごめん、どこにあるのか思い出せないや。
 
どう考えても大事なものなのに!
 
大事なものだということは、もちろん知っているさ。
だから、ずっと手に持ってたんだ。
ボクは荷物も持ってないし、ポケットにも入らないからね。
おかしいなぁ…
確かに飲み過ぎてたけど、ちゃんとしまった記憶があるんだよね。
その時は、自分の思いついたアイデアに満足していたほどだったんだよ。
 
ずっと手に持ってたのに、なんでまたしまおうとしたんだ?
 
ボクはすごく真剣にモンドのお酒と稲妻のお酒を飲み比べていたんだよ。
そしたら、両方の手にグラスを持たなきゃいけないだろう?
つまり、招待状を手で持つことはできない。
それに、忘れてしまってもいけないから、適当な場所にも置けない。
 
どうやら、あそこしかないね。
キミも気付いているんだろう?
ええ?
おまえたち二人とも、招待状がどこにあるのかわかったのか?
 
>靴の中?
そんなわけないだろ、招待状ってけっこう大きいんじゃないのか?
それに、靴の中に入れたなら、歩くときに気づくだろ!
あははっ、確かに飲み過ぎたら舌はピリピリするけど、足にまで及ぶことはないよ。
 
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>マントの中?
そんなわけないだろ、マントになにかを収納する空間なんてないしゃないか。
でもまあ、確かに悪くないアイデアだな。
吟遊野郎、今度マントを改造してみたらどうだ?
 
うん、マントは見た目の美しさ以外、何の役にも立たないって言う人がよくいるからね。
そうすれば批判する人も減ると思うよ。
 
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>帽子の中?
あっ、そうだった。
さすが君だね。
 
ウェンティは帽子の中から招待状を見つけた…
 
確かに社奉行が送った招待状だ。
客人の身分について、これ以上疑う余地はない。
しかし今晩からは、万国商会に滞在していただけると助かる。
では、私はこれで先に失礼させてもらう。
 
裟羅、行っちゃったな。
オイラたちも平山編集主任に資料をもらいに行こうぜ。
 
平山編集主任、ボクが今日会う約東をしていた白亜だ。
 
おお、白亜先生でしたか!
稲妻にいらしたばかりなのに、このような事になってしまい本当に申し訳ありません…
こちらが五歌仙の資料です。
我々が探し出せた情報はすべてここに載せてあります。
 
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五歌仙の資料概要

八重堂の平山編集主任がまとめた五歌仙の資料。
白亜先生が五歌仙の絵画を完成させるのに役立つ。
限定的な内容ではあるが、当時の五歌仙の人品を垣間見ることができる。
 
五歌仙の資料概要
「五歌仙」について
五歌仙とは、かつて稲妻にいた伝説の人物たちのことである。
詩歌を読むのが達者であることから「五歌仙」という美名を授かった。
伝説では、将軍様が彼らの作品を好んでいたという。
そのため、毎年五人の新作を一冊の詩集にまとめた後、一人を天守閣へ向かわせ、それを将軍様に献上していたそうだ。
五歌仙の名はそれぞれ「翠光」、「葵の翁」、「赤人」、「墨染」、「黒主」である。
五人の本名は今はもう不明。
ただ、よく知られている説の一つに、次のようなものがある――
五歌仙物語が大量に舞台化された時、登場人物を識別しやすいよう緑、青、赤、白、黒の五色で服を作ってそれぞれ区別させたそうだ。
そして月日が流れ、観客たちは登場人物の代表色でそれぞれの歌仙に名をつけたという。
ただ「翠光は草庵の名である『翠光堂』によるもの」という説や、「赤人は作品に朱色の印をつけるのを好んでいたため」という説もあるようだ。
……

「五歌仙物語」について
五歌仙の形象は人々の心に深く根付いており、彼らを主人公とした作品もかつて稲妻で人気を博していた。
五歌仙物語は、ここに至るまで数多く伝わってきた。
しかし今となっては、その具体的な内容の正確さを知ることは不可能である。
おそらく、五百年前の大災の際に失われてしまったのだろう。
現存する資料によれば、五歌仙物語の創作全盛期、その作品は基本的にすべて同じ形式で作られていたようだ。
四つの詩を一組とし、それぞれの歌仙の視点から書かれている。
それら四つが合わさると、完全な物語となるのだ。
ただ興味深いことに、これらの物語に「黒主」視点の独立した章はない。
……
 
五歌仙の資料概要五歌仙の個人資料まとめ
翠光:酒飲み、平民出身、自由奔放な性格。
ある説では、住んでいた草庵の名が「翠光堂」であったためつけられた名だという。
 
葵の翁:変棋を得意とした老人。
詩歌以外にも、小説という形で作品を世に残している。
ある説では、彼が名声を得たのは比較的晩年で、その正体は幕府の役人だったという。
また彼は人間ではなく、長寿の妖狐が化けた姿だという説もある。
 
赤人:剣術に長けており、武人の出身である可能性が高い。
ある説では、赤人の名の由来は、自分の作品に朱色の印をつけることを好んでいたからだと言われている。
 
墨染:かつては基女であり、華道、舞踊に長け、後に将軍の侍女を務めた。
墨染は有名になったあと官職を辞任し、創作に専念したという説があるが、晩年まで将軍の側近として仕えていたという説もある。
 
黒主:情報が少なく、正体不明。
そのためか、物語における黒主の身分や人物像は、他の者より多種多様である。
……
 
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どれ…
うん、ボクの予想通り、「翠光」や「葵の翁」といった名前は、五歌仙の本名ではなかった。
「五歌仙物語は、ここに至るまで数多く伝わってきた。
しかし、今となっては、その具体的な内容の正確さを知ることは不可能である」…
はぁ、実に残念だ。
ともかく、五歌仙物語のほとんどが似たような形式で書かれていることが分かった。
これも収穫といえるだろう。
 
アルベド、その情報って絵を描くのにも役立つものなのか?
確かにアイデアは得られたね。
だけど、一番重要な「インスピレーション」が、まだ欠けていると認めざるを得ない。
 
平山
申し訳ございません…
これらの資料は確かに、詳細に欠けるものです。
しかし今のところ、これ以上の内容は見つからないのです。
ですが、八重様はこのように仰っていまし——
五歌仙の伝説は千安万化、一人一人違った物語を心の内に秘めている、と。
ですので、白亜先生も心のままに、ご自身が面白いと思うものを描いて下さるだけでいいのです。
 
確かに神子が言いそうなことだな。
 
編集主任、心配しなくていい。
絵のことはボクがなんとかしよう。
 
平山
ありがとうございます。
それでは、白亜先生にお任せいたします。
それから皆さん、最後にもう一つ頼みたいことがございます。
明日の朝、『沈秋拾剣録』の作者枕玉先生が、船で稲妻に到着される予定なのです。
もし枕玉先生を見かけたら、どうか新刊窃盗の件はご内密にお願いできないでしょうか。
小説が回収できるか否かに関わらず、八重堂は最善を尽くして新刊即売会を成功させるつもりです!
 
>分かった。
 
ありがとうございます。
では、私はこれで失礼いたします。
 
どうやら、ここでやるべきことはもうないみたいだな。
オイラたちも行こうぜ。
吟遊野郎、そんなところでなにやってるんだ?
置いてっちゃうぞ!
 
旅人、アルベド、こっちに来てくれるかい?
面白いものがあるよ。
 
ウェンティが何か手がかりを見つけたようだ。
彼のところへ行ってみよう。

 
…ウェンティと会話する…
 
吟遊野郎、これってなんの紙なんだ…?
 
今朝ボクが倉庫から目覚めた時、寝ていたウッドコンテナに落ちていたんだ。
その時は、元から落ちていた紙切れだと思ってあまり深くは考えなかった。
だからざっと見ただけで、この近くに置いたのさ。
でも今は、この紙に書かれた内容を君たちも詳しく読んでおくべきだと思うよ。
 
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『五歌仙容彩・翠光編』

ウェンティが港の倉庫の貨物箱で見つけた紙切れ。
紙には、『五歌仙容彩・翠光編』という時が書かれている。

『五歌仙容彩・翠光編』
 
五歌仙容彩翠光編
よばなれて かりほに住みし 身なれども
かかる憂き名に なまわずらはし
緑衣着て 歌仙のうたを 献ずれば
欠きしものあり 翁の秀歌
頭たれ 叩きやうやう おぼゆるを
舌疾に訴ふ かくて言ひけり
あなかしこ 酔ひさまたれし 昨夜のこと
仮寝のわが身 寄るけはいあり
かるが故に さる盗人の 後ろ矢に
御前でかかる 恥をみしかな
 
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どれどれ…
『翠光編』?
待てよ、「翠光」って五歌仙のうちの一人じゃなかったか?
この詩にある物語の内容はこんな感じだ——
歌仙翠光は酒に酔い、将軍へ届けるべき歌を盗まれてしまった。
うーん…
この物語、ここ最近どこかで聞いたような…
 
聞いたどころか、まるでおまえの昨日の体験じゃないか!
 
あははっ、すごく面白いと思わない?
 
>小説寄盗事件と関係があるみたい。
うん、ボクもそう思うよ。
この紙を残したのは、犯人じゃないとしても、一部始終を目撃しているに違いない。
でも、どうしてこんなことを?
もし目撃者だったとして、なぜ窃盗行為を止めなかったんだろうか?
 
まあまあ、今はそんなに深く考えないほうがいいよ。
みんな朝から忙しかったでしょ。
せっかく稲妻で会えたんだし、これからどこかでパーッと飲もうよ!
 
おいおい、酔いが醒めたばかりだっていうのに、また飲むのか?
アルベドはまだ創作が残ってるんだぞ。
おまえにかまってる時間はないんだ!
 
いや、問題ない。
一緒に一杯飲みに行こう、ボクの著りだ。
 
えっ、絵はいいのかよ?
 
前にも言っただろう、ボクはインスピレーションさえあればすぐに描けるタイプだって。
今、その一番重要なインスピレーションを見つけたんだ。
それに、モデルを作品に取り入れるには、それ相応の報酬を支払う必要があるからね。
 
あははっ。
だったら、美味しいおつまみも頼んじゃおうかな!
 
或る年 翠光が天守閣に赴きて 歌集を殿様に棒ぐ
されど 葵の翁による歌の 一枚破れたる咎めを受けにけり
翠光は非をめて曰く 「昨晚 大酒を飲みき」
酔いし翠光にじり寄るは 
或る影なりけり

さすがアルベド…
容彩祭の開幕前に、一枚目を間に合わせるなんてな。
 
うん、ボクもすごくいいと思うよ。
稲妻のスタイルで描かれていながら、現代人の美的センスも兼ね備えている。
特にキャンバスの中のボク…
熟睡しているにも関わらず、なんて優雅な姿なんだ。
 
おいおい吟遊野郎、あんまり調子に乗るなよ。
おまえはあくまでモデルであって、絵の中の人物じゃないんだからな。
 
アルベド、次はなにを描くんだ?
 
次は、五歌仙の「葵の翁」だ。
 
アルベド、その絵を描くのは少し待ってからにしない?
もしかしたら、「似たようなもの」がまた見られるかもしれないよ。
 
似たようなもの?
 
他の五歌仙物語が書かれた紙切れ、ということだろう。
資料によると、流通している五歌仙物語は全部で四篇らしい。
だけど今はまだ一篇しか現れていない。
おまえたちは、あの紙切れを残した謎の人物がまた現れるって言いたいのか?
 
その可能性はある。
それに、五歌仙物語自体にも、興味深いことがあるんだ。
例えば、歌仙は五人いるのに、かつて流通した物語はすべて四篇で一つのシリーズだったこと。
ほとんどすべての物語において、「黒主」の独立した章節がないんだよ。
 
それについては、ボクもちょっと気になるなぁ。
でもモンドには——
「風が物語の種を運び、時間がそれを芽生えさせる」っていう古いことわざがあるだろう?
今は、ゆっくり待とうよ。