華彩紫庭真説 第四幕/黒に染まりし宵暗の御所

2.6 修正(書体/吹出)

調査から戻った万葉は、一体どのような真実をもたらしてくれるだろう?
長年封印されてきた秘密が、だんだん明らかになってきた
 
万葉は調査したいことがあるからと言って、明日の昼にまたみんなと会う約束をした。
約束の時間(12時~14)まで待とう。
 
…次の日の昼まで待つ(12時~14)
 
万葉のやつ、今日は五歌仙広場でオイラたちを待ってるって言ってたよな。
早く行こうぜ。
 
約束の時間になった。
五歌仙広場に行って万葉と合流しよう。
 
…五歌仙広場に行く…
 
来たか。
これでそろったでござるな。
 
>万葉、調査のほうはどうだった?


昨夜、かつて拙者の家に仕えていた古い使用人を訪ね、当時の経緯を聞いてきたでござる。
「一心伝」が拙者の曽祖父の代にあった頃、とある古い鍛造図を用いて、重要な御神刀を鍛造するよう命じられた。
経験豊富な刀工たちが鍛造したにも関わらず、その工程は困難を極め、出来上がった刀はどれも欠陥品であった。
期限は目の前であるのに、刀が完成しない。
担当の刀工たちは罪に問われることを恐れてみな逃亡してしまったのでござる。
楓原家と社奉行は調査を行い、曽祖父と神里家当主もやっとのことで、海辺にいる刀工たちを見つけたが…
しかし刀工たちの激しい抵抗にあい、結局は逃亡を阻止できなかった。
楓原家は傘下の刀工たちの離反を許すこととなったために厳しく罰せられ、それ以来没落していったのでござる。
そればかりか、当時の神里家当主も脱走者に傷を負わされ、高齢も相まって問もなく亡くなった。
 
はい…
あまりに突然な当主の逝去により、神里家はしばらくの間、指導者不在の危機に陥りました。
それだけでなく、その隙に乗じて裏切る者まで現れ、社奉行での地位も危ういものになったのです。
この事件の影響は計り知れず、私の父が当主になった頃も尚、神里家は当初の名声を取り戻せていませんでした。

>そうだったんだ
幸い、今はお兄様のおかげで、よくなってきています。
 
当時の鍛造失敗は、最終的に「技術不足」と結論付けられた。
楓原家も社奉行も、ずっとそう思っていたのだ。
しかし五歌仙物語は、技術ではなく、鍛造図の改ざんが鍛造失敗を引き起こしたと示唆していたのでござる。
 
綾華殿、鍛造が失敗に終わったあと、その鍛造図は社奉行が保存していると拙者は聞いたのでござるが。
一つ頼んでもよいだろうか?

分かりました、帰って鍛造図をお探しします。
後ほど神里屋敷にてお会いしましょう。

昔の鍛造図を探すために、綾華は先に神里屋敷へ戻った。
後を追って彼女と合流しよう。
 
神里屋敷に行く…
 
綾華に何を見つけたのか聞こう。
 
…綾華と会話する…

皆さん、当時の鍛造図が見つかりました。
 
うん、よく保存されているけど、少なくとも三百年から四百年の歴史があるみたいだね。
こんな古い鍛造図から、改ざんされた証拠なんて見つかるのか?
 
ここまで来たんだから、運に任せて試してみるしかないでしょ。
 
鍛造図を水の中に浸した。
数十分後…

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古代の鍛造図
かつて将軍はこの古代の鍛造図に基づいて「御神刀」を作るよう、楓原家に命じた。
水に浸されたこの鍛造図は、一部の文字がぼやけてしまっている。
誰かが設計図を改変したせいで鍛造は失敗し、一連の悲劇を引き起こす結果となった…


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はっきりとした変化はないけど、それでもいくつかの字がかすれているのが分かる。
万葉、この鍛造図は確かに改ざんされたものだよ。
当時、誰かが楓原家を陥れようとしたのだろう。
 
ふぅ…この真相を知るには、少し遅すぎたかもしれぬ。
実は祖父が若かった頃、何度も曽祖父に「一心伝」の再興を申し出たが、その度、曽祖父に力をわきまえておらぬと叱責を受けていたらしい。
使用人の話では、曽祖父は社奉行まで出向き、この鍛造図を祖父に見せて刀を鍛造させるように、神里家当主に頼んだこともあったようでござる。
そして何の疑問も抱かずに祖父は失敗した。
曽祖父日く――
「その中の秘密に気付けぬのであれば、一心伝の消滅も当然のこと」と。
その言葉を聞いて祖父は、感情のままに稲妻を離れたのでござる。
曽祖父の最期を見届けることすらできず…
今思えば、あの曽祖父と祖父の争いは、根本的に意味を成しておらぬものであった。
 
万葉…
 
貴方の曽祖父様である楓原義慶公は、若い頃とても勤勉だったそうですね。
しかしある時を境に、鍛造技法に取り組むのをやめたと。
その失敗が彼に与えた影響は、計り知れなかったのでしょう。
万葉、キミの曽祖父が当時言っていた言葉は、本当に「その中の秘密に気付けぬのであれば」だったのかい?
 
うむ、これらの言葉はすべて直接耳にしたからはっきりと覚えている、使用人はそう言っておった。
しかも、当時の祖父は怒りに任せて、曽祖父が大切にしていた盆裁すらも投げて壊したと聞いたでござる…
 
>アルベド、まさか…
どうやら、キミもボクの言いたいことが分かったようだね。
万葉、もしキミの曽祖父が一心伝の技術不足が原因だと考えていたなら、息子の失敗を見て「能力が足りない」といった類のことを言うはずだろう?
しかし彼は――「その中の秘密に気付けぬのであれば」と言った。
おかしいとは思わないかい?
 
…はっ!
お主が言いたいのは…曽祖父は失敗が誰かの妨害によるものだと、とっくに知っていた…
ということか…?
 
今ある証拠から見ると、その可能性は大いにあると思う。
 
…みな、一度天領奉行へ着いてきてはくれぬか?
以前、拙者が指名手配されてから、屋敷の中で残っていた最後の古い屋舎も天領奉行に差し押さえられたのだ。
そこには、古くから家にあった物が保管されていたでござる。
それらの物が今どこにあるのか、聞きに行こうと思う。
もし見つかれば、何か手がかりになるやもしれぬ。
 
じゃあ、すぐに出発しようぜ。
 
天領奉行府で九条裟羅を探し、楓原家から押収された物たちが何処にあるのかを聞こう。
 
…天領奉行府へ向かう…

九条裟羅
と会話する…
 
どうしてお前たちがここにいる。
離島で何かあったのか?

>違うんだ、裟羅。
>一つ聞きたいことがある。
 
九条裟羅、拙者を覚えておるか。
 
覚えている。
楓原万葉だな。
目狩り令の発令中は指名手配されていたが、今はもう撤回されている。
 
裟羅!
一つ聞きたいんだけど、万葉の家が天領奉行に差し押さえられたときに中にあった物たちは、今どこにあるんだ?
当時押収した物は、奉行所の隣にある倉庫に保管されている。
だが楓原が稲妻に戻った今、確かに本来の持ち主に返すベきだな。

誤解でござる。
拙者たちが来たのは物を取り戻すためではないのだ。
ただ私的な用事で、あれらの物の調査をしたい。
 
分かった。
私から奉行所に、お前たちを倉庫へ連れて行かせるよう連絡しよう
 
ありがとう、裟羅!
 
楓原、目狩り令の時は…
 
九条裟羅、あれはすでに過去のこと、言う必要はない。
お主に自らの信念と苦衷があったことは、拙者も分かっているでござるよ。
 
……
 
一つ、頼まれてはくれぬか?
 
ああ、聞こう。
 
拙者は、今さら稲妻に戻って生活する気はない。
家にあった物たちは、拙者にとって無意味なものでござる。
九条裟羅、お主の信義を信じて頼みたい。
拙者たちが調査を終えたら、あれらの物を代わりに処理してほしいのだ。
どこかへ売って、得た資金を貧困に苦しむ民の救済に使ってくれぬか。
 
承知した、私が責任を持って処理しよう。
安心するといい。
 
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奉行所には伝えておいた。
担当の者が倉庫へ案内するはずだから、直接向かうといい。
それから、楓原家が残した物については、近日中に私が処理する。
 
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楓原家の押収物は奉行所の隣にある倉庫に保管されている。
裟羅はあなたたちが調べに行く旨を当番の同心に伝えた。
 
奉公所の倉庫に行く…
 
浅川(同心)
皆さん、楓原家の物品を調査しにいらしたのですよね。
九条様からすでにお話は聞いております、私について来てください。
楓原家の物品は、すべてこの倉庫の中です。
空間をうまく使うために少し散らばって置かれていますが、ご容赦ください。
ですが物品にはすべて標記を付けておりますので、簡単に見つかるはずです。
私は入り口で待っていますので何かあればお申し付けください。
 
万葉殿、散らばって置かれているのなら、手分けして手がかりを探すのはどうだろうか?
 
うむ、よろしく頼む。

みんなは倉庫で手分けして手がかりを探している。
それぞれ何を見つけたか聞いてみよう。
 
皆と会話する…
 
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浅川
すみません、ここの物はすべて最近運び込まれたので、少し散らかっております。
以前の倉庫はもっと広かったのですが、鍵が古く、危うく窃盗事件に発展するようなこともありましたので、九条様がここに移すよう命じたのです。
 
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拙者はこの近くを調査する。
お主らは他の場所をあたってくれ。
 
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>綾華、進展はどう?
 
あっ、貴方でしたか。
今この刀掛けを調べています。
 
楓原家って刀鍛治の名家なんだろ?
この刀もすごく価値のあるものじゃないか?
たとえば「一心伝」の傑作とかだったりして。
いえ、刀掛けには確かに上質な木材が使われていますが、上に置かれているのはごく普通の刀です。
楓原家の最終的な経済状況からすると、価値のある物はすべて売られたのでしょう。
この刀には刃がございませんが、刀の柄には使われていた痕がかなり残っています。
楓原さんが幼い頃、剣術を習う時に使っていたものかもしれませんね。
 
どれどれ…
あっ、鞘にくねくねの字が書かれてるぞ!
「かず…は」、へへっ、本当に万葉が小さいころに使ってた刀みたいだな。
万葉の小さいころの姿が目に浮かぶようだぜ。
 
私は近くにある他の物を調べて参ります。
何か見つけたら貴方がたをお呼びいたしますね。
 
キミたちか。
こっちはまだ、手がかりになるようなものは見つけられていないよ。
 
そっか。
でもこの屏風、けっこう年季が入ったものみたいだぞ。
 
そうだね。
保存状態が良ければ、高値で売れていたかもしれない。
だけどこの状態では、もう無理だろう。
さっき調べてみたんだけど、裏のほうに広い範囲で、土の塊が生地の繊維にこびり付いていたんだ。
布にこれだけしっかりくっ付いていることからすると、よほど強い力で土が張り付いたんだろうね。
もしかすると、万葉の祖父が投げつけた盆栽が、この屏風に当たったんじゃないかな。
 
>それって重要な発見じゃない?
>何でこれが手がかりじゃないの?
これはボクたちの見つけたいものじゃないからね。
少し考えさせてくれ…
情報を残したければ、ボクなら絶対にもっと特殊な物に残すはず…
 
アルベドは考え込んでるみたいだな、今は邪魔しないでおこうぜ。
 
行秋、なにか見つけたか?
 
うん、古い書籍をいくつか見つけた。
鋼鉄の製錬に関するものや、刀の鍛造工程に関するもの、そして植物や生け花について書かれたものもある。
 
植物や生け花の本は、きっと万葉のひいおじいちゃんのものだな。
 
>何か手がかりはありそう?
さっきざっと読んでみたが、手がかりになるものは見当たらなかったな。
もう少し詳しく調べて、何か見つけたら教えるよ。
 
うーんと、ここにはあるかな…
 
>ウェンティ、何を探してるの?
ほら、ここに瓶がたくさんあるでしょ、お酒が入ったものも一つや二つあるんじゃないかな?
 
おいっ!
みんな真面目に手伝ってるのに、おまえはお酒を探してたのかよ!
あははっ、冗談さ。
もうそろそろ真実を見つけられるというのに、どうしてそんな心配そうにしているの?
 
だって、オイラわからないんだ。
なんで万葉は、この物たちの処分を今日頼んだんだよ?
もし、オイラたちが今日なにも見つけられなかったら…
ま、万が一の話だぞ!
そうなったら、万葉はこの先永遠に、当時の真相を見つける機会を失うんじゃないのか?
 
万葉のことが心配なのは分かるけど、彼は君たちが想像しているよりもずっと強いと思うよ。
彼がそのようにやるって決めたのなら、覚悟の上ってことさ――
今日中に答えが見つかっても見つからなくても、出てきた答えが何であっても、彼はそれを受け入れる覚悟を決めている。
 
>それはウェンティの神としての直感?
直惑って言うより、年の功かな。
長く生きてきた分、人を見てきた経験も多いからね。
こっちはボクに任せて。
君たちは他の場所を調べてみてよ。
 
皆の者、ここにあるものを見てくれぬか。
 
万葉がなにか見つけたみたいだぞ。
行こうぜ。
 
万葉が手がかりを見つけたようだ。
行ってみよう。
 
…万葉のところに行く…
 
これは拙者の家に昔からあった盆栽でござる。
聞いたところによると、曽祖父が残した物らしい。
 
中にある植物は、もう枯れてからだいぶ経つみたいだな。
 
うむ、曽祖父は鍛造技法の研究をやめてから、盆栽に勤しむようになった。
しかしその盆栽は、曽祖父が大病を患った時にほとんど手放しているのでござる。
しかしそれでも、曽祖父はこの枯れた盆栽だけは手放さなかった。
それだけでなく、決して捨てることを許さぬという遺言も祖父に残したと聞く…
祖父もまた、最後まで和解できなかったことを悔やんでいたために、これをそのままにしたのであろう。
だが今思えば、曽祖父がこれを残したのは、きっと何か考えがあってのこと。
 
そう聞いてみると、この盆我が怪しいな。
 
うむ、詳しく調べてみるでござるよ。
 
盆栽の底に層をなしている場所を見つけた…
 
見つけたぞ!
でも、白い紙が何枚かあるだけみたいだぞ?
もしかして、誰かが先に気づいて、中身を入れ替えちゃったのか?
 
それはないと思うよ。
これを見てくれ、紙が黄ばんでいるだろう。
年季の入ったものであるのは間違いない。
 
>また水を使う時が来たのかも。
それは、綾華殿が以前手に入れた紙のように、これも特殊な墨汁によって書かれているということでござるか?
 
ボクも、彼女と同じ考えだ。
 
じゃあ、さっそく試してみようぜ!
 
奉行所の外に池がある。
そこでこの紙を濡らしてみるでござるよ。

万葉と共に奉行所の外にある池へ向かった…
 
……
 
万葉、どうだ?
まさか普通の紙じゃないよな?
 
みなの予測した通り、水に濡らすと確かに文字が現れたでござる。
見たところ、曽祖父からの手紙であろう。

手紙には何が書かれていたんだ?

>私たちが知ってもいいこと?

うむ、曽祖父の知っている真相は、すべて話すつもりでござるよ。
ただその前に、みなを連れていきたい場所がある。
ついて来てくれぬか。

万葉はみんなをある場所まで連れて行き、過去にあったことの真相をすべて明らかにすると言った。

…万葉と共に海辺に行く…

楓原さん。
どうして私たちを海辺まで連れてきたのでしょうか?

>手紙の内容と関係ある?
うむ。この海岸は、かつて曽祖父と神里家当主が逃亡した刀工を追って、最後に辿り着いた場所でござる。
拙者たちの推測は間違っていなかった。曽祖父は確かに、鍛造失敗の真相を知っていたでござる。
それどころかこの場所で、楓原家と雷電五箇伝を陥れた犯人を見つけたようであった。
手紙はこう始まる。
「この手紙を読む者へ
拙者、楓原義慶は生涯、ある「秘密」に囚われた。
今となっては、老い先短きこの命。
とくと考えた末、これを以て仔細を記すことにする。」
あれは、社奉行の神里様と共に離反した刀工たちを追っていたときのことであった。
あのとき神里様が負われた傷は、脱走者によるものではない。
実を言えば…」

あれは夜のことであった。
手がかりを頼りに岸辺まで辿り着いたものの、刀工の姿はなく…
ただ一人の傾奇者がそこにいた。
傾奇者は拙者をずっと待っていたと話した。
そして、自らが裏で手引きし、雷電五箇伝を消滅させるのだと語った。
その者の実力は、到底常人が敵うものではなく、須臾の間に、同行したすべての武士が倒されてしまった。
神里様も重傷を負われたが、拙者のほうはというと、攻撃が笠に当たったために死を免れた。
傾奇者がもう一振りしていれば、拙者の命を奪えたであろう
ところがやつは拙者の顔を見ると攻撃をやめ、厳かな声で、拙者と「丹羽」の関係について問いただした。
拙者はそれが父の旧姓であり、父が失踪したのち拙者が楓原の養子になったことを告げた。
傾奇者はそれを聞いて口を噤んだ。
長い沈黙の後、曰く――
「彼女に告げよ、我が名は『国崩』である」と。

そんなことがあったのか!
 
ああ。
曽祖父と神里家当主は九死に一生を得て、鍛造図が国崩によって改ざんされた真相を知ったのでござる。
しかし神里家当主はその経験により曽祖父が国崩の縁者であると濡れ衣を着せられることを恐れ、自らの死に際も決して口にしないようにと曾祖父に告げていたらしい。
それに、犯人は雷電五箇伝を減ぼすと口にしていた。
曽祖父はその者が報復に戻ってくる可能性を考え、家族を守るために家業を諦めたという次第でござる。
曽祖父はこのようにも書き残していた――
「楓原の当主として、『ー心伝』の没落を深く恥じる、しかしいち父親として、子孫の安泰を祈らずにはいられぬ」と。
 
>息子のことを心配してたんだ…
>だからあんな冷淡なことを言ったんだ。
そうでござるな。
もしも当時、祖父が鍛造図の秘密に気付けていれば、あるいは曽祖父も真相を話していたやもしれぬ。
しかし残念ながら、祖父は曽祖父の言葉を聞いてもなお真相に気付くことができなかった。
綾華殿は、曽祖父が語ったこれらの話を知らなかったようにお見受けするが、このことについてどう考えるのでござろうか。
 
恐らく、当時の神里家当主が後の世代にも話を残さなかったのは、同じ考えからのことかと思います。
敵は将軍様の鍛造図さえも改ざんすることができ、あまつさえ単独で多数と戦うことも可能な人物。
きっとその正体は、尋常ならざる者なのでしょう。
私も近いうちにお兄様にこのことを話し、国崩という者の身分調べてみます。
もちろん、慎重を期して行動いたしますので、どうかご心配なく。
 
>万葉はどうする?
実はこの手紙を読んだときは心が乱れておったのだが、よらやく落ち着いたでござる。
手紙には、子孫たちは復讐で盲目にならぬよう、どうか昔のことに囚われないで欲しいと――
そう書かれていた。
曽祖父はやるせない思いでそれを書いたのかもしれぬが、拙者からすれば、これはいかにも理にかなった言葉。
思うに、人にとって最も重要なものは過去ではなく、今でござる。
過去の重みを背負いはしても、それによって己の追い求めるものまで失ってはならぬ。
それゆえ、ことの真相を知れただけで拙者は満足でござるよ。
拙者は曽祖父が願ったように、前を向いて生きていく。
もちろん、もし当時の敵が未だに存在し、未だに何らかの陰謀を企んでいるのであれば、決して見過ごすつもりはないでござる。
 
>さすが万葉、とても冷静。
>さすが万葉、度量が広い。
拙者が以前経験した数々の出来事から得た、感悟に過ぎぬよ。
みな、真相を導き出してくれたこと、まことにかたじけない。

解決したことだし、離島に戻ろうぜ。

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楓原義慶の手紙

古い植木鉢の隙間に隠されていた真っ白な紙。
水に浸すと、長年封印されていた秘密が浮かび上がってきた。
手紙に書かれた真実を皆に話した後、万葉が「お主の役に立つかも」と渡してくれた。
 
楓原義慶の手紙
この手紙を読む者へ
拙者、楓原義慶は生涯、ある「秘密」に囚われた。
今となっては、老い先短きこの命。
とくと考えた末、これを以て仔細を記すことにする。
あれは、社奉行の神里様と共に離反した刀工たちを追っていたときのことであった。
あのとき神里様が負われた傷は、脱走者によるものではない。
真相は別にある。
あれは夜のことであった。
手がかりを頼りに岸辺まで辿り着いたものの、刀工の姿はなく…
ただ一人の傾奇者がそこにいた。
傾奇者は拙者をずっと待っていたと話した。
そして、自らが裏で手引きし、雷電五箇伝を消滅させるのだと語った。
その者の実力は、到底常人が敵うものではなく、須臾の間に、同行したすべての武士が倒されてしまった。
神里様も重傷を負われたが、拙者のほうはというと、攻撃が笠に当たったために死を免れた。
傾奇者がもう一振りしていれば、拙者の命を奪えたであろう。
ところがやつは拙者の顔を見ると攻撃をやめ、厳かな声で、拙者と「丹羽」の関係について問いただした。
拙者はそれが父の旧姓であり、父が失踪したのち拙者が楓原の養子になったことを告げた。
傾奇者はそれを聞いて口を噤んだ。
長い沈黙の後、口を開いた――
「彼女に告げよ、我が名は『国崩』である。」と。
そしてその後、その者は去っていった…
 
鍛造がうまくいかなかったのは、この傾奇者によって大御所様の鍛造図を改ざんされてしまったが故であった。
神里様はこの出来事の重要性を知っていたが、拙者が部外者に濡れ衣を着せられ、巻き込まれることを恐れた。
それ故、病で危篤の状態になっても、脱走者にやられたと主張し、拙者にも口止めをした。
神里様のお心遣いには感激しかないが、現状ではこの件を心の底に秘めることしかできぬ。
楓原の当主として、『一心伝』の没落を深く恥じる。
しかし一人の父として、子孫の安泰を願わずにはいられぬ。
この手紙を読む者が楓原家の後人であるならば、これだけは忘れないでほしい。
過去の敵を盲目に追いかけてはならぬ。
過去に縛られれば、自らの境地を見失ってしまうであろう。
 
楓原義慶直筆の手紙

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