北方秘史

書籍


■1
遺跡の中で偶然発見された古代レムリアの書籍。
記載されている内容の真偽は検証できない。

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■2
遺跡の中で偶然発見された古代レムリアの書籍。
記載されている内容の真偽は検証できない。

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■3
遺跡の中で偶然発見された古代レムリアの書籍。
記載されている内容の真偽は検証できない。

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■第1巻
古往今来、尊敬すべき詩人や劇作家、歴史家は荒唐無稽な虚構を綴り、それを真実だと主張したがるものだ。
一見して嘘と分かるホラ話を、彼らは言葉巧みに記そうと躍起になる。
「この目で見た嘘偽りない真実」だとまことしやかに語るその姿は、後世の人々の嘲笑をまるで恐れていないかのようだ。
たとえばテラシウスの子・クサントスは北方の蛮族の村での見聞を記した。
曰く、彼らは山間にガラスとプラチナでできた立派な都市国家を築き、自らの王を「騎士」と呼んだ。
七十二の軍団を有し、各軍団に所属する六万六千六百人全員がマキモスの水晶より光り輝く極上の純水で鍛造した武器を持っていた云々。
だが現実の彼は生涯一度もカピトリウムを出ていない。
蛮族どころかウナギすら目にしていないはずだ。
それでも彼の物語には興趣をそそるものがあったといえよう。
だからこそ私も虚栄心をくすぐられ、後世に残るものを書くべきだと思うに至った。
しかし私にはこれといった経験もなければ、あの尊敬すべき人々のようにでたらめな内容を「真実の記録」と主張する勇気もない。
それゆえ素直に認めよう。
私の書くものは徹頭徹尾「嘘」だ。
そう認めれば、嘘つきのそしりを受けることもないだろう。
とにかく私がこれから記す物語は誰も聞いたことがなければ経験したこともない、ゼロから作り上げた完全なフィクションである。
その真実の割合は「純水騎士」と大差ない。
どうか皆さまも、ゆめゆめ騙されることのなきよう。

何はさておき、我々は港を出て一路北を目指した。
蛮族の領地を越え、風に身を任せて進む。
我々の目的はシンプルだ――
大海原の果てを見てみたい。
高海は越えられぬ滝に360度囲まれているとするクィンクティリウスの説は明らかに誤りだ。
偉大なるユウェナリスも「遠き北方の王国」と言っていたではないか。
だが北へ向かうにつれ、陸地が徐々に消えていった。
最初は塊に見えた島々も、あとになると禿げ上がった小島だけが残った。
それから幾日か航海すると小島すらなくなり、見渡す限りの海が広がるばかりになった。
幸い我々は淡水と食糧を十分に備蓄していたため、飢えや渇きで死ぬことはなかった。

七十九日間休まず航海を続ける間、陸地を目にすることはなかった。
本来はそこで引き返す予定だったが、八十日目に予期せぬ事態が起きた。
海のど真ん中で襲撃に遭ったのだ。
巨鳥の背にまたがる悪人どもが我々の前に立ちふさがり、ジャガイモを寄越せと迫った。
その鳥がどれほど巨大だったかは、羽一枚が海を支える柱ほど太かったといえばお分かりいただけるだろうか。
我々に反撃する術はなく、ただひざまずいて「どうかお助けください」と至尊に祈り、もう二度と無暗に旅はしないし、わけの分からない旅行記も書かないと誓うしかなかった。
その瞬間、プクプク獣に乗る戦士の一群が海底から飛び出してきた。
プクプク獣はいずれも一頭が駄獣五十頭分ほどの大きさで、水晶や龍の鱗、キャベツでできた鎧を全身にまとっていた。
それに噛みついた巨鳥は逆に金切り声を上げ、すぐさま逃げ出して姿を消した。

その時、騎士たちの風貌が我々人類とは明らかに違うことに初めて気づいた。
どちらかといえば直立歩行するヴィシャップに近い。
リーダー格の騎士は異様な光を放つ瞳で我々をひとしきり観察した後、おもむろに口を開き、翼が生えた言葉で「サルヌムからおいでの旅商人の皆さまでしょうか?」と尋ねた。

我々はサルヌムがどんな場所かも知らない。
そこで我々はレムリアの航海士で、大海原の果てを見に行くのだという事実をありのままに伝えた。

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■第2巻


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■第3巻