捷悟(講談師)☽

会話 修正(吹出) 璃月

(この話はとても面白いぞ…)

舞台上と舞台下、講談師がそれぞれ言うべき言葉については…
かなり奥深いぞ…

①その奥深い部分を説明してくれない?

おっと、そう急ぐ必要はない。
準備も必要なので、その話はまた夜にしよう!
坊間の逸話なら、今から教えてやってもいいぞ。

 >例えば?

たとえば、翹英荘にやって来たフォンテーヌの行商人の話。
茶事に招待された彼は、急須に注いだばかりの湯を茶杯に入れ、せかせかと口に運んだ。
そしてゴクリとがぶ飲みすると、茶の香りが濃厚だと盛んに誉めそやした…
だが、彼が飲んだのは茶器を洗うために入れたお湯だった。
濃厚な茶の香りというのは、前回淹れた茶の残り香だったというわけだ。
主は彼のそんな行動をとがめるどころか、自らもお湯を口に含んでみせた。
それからよいお茶を淹れて、もう一度客をもてなしたというわけさ。

  >他には?

それと酒好きのモンドの詩人が、村に来て数人の若者と酒の飲み比べをしたという話もある。
その若者の家の自家製酒は、甘く爽やかでするする飲めてしまう。
詩人は続けざまに数杯飲むと上機嫌になり、この世の神秘に触れたような心持ちになった。
そばにいた人を押しのけて筆を走らせた彼だが、その時一陣の涼風が吹き抜けた。
詩人は一瞬ぽかんとした後、バタンと床に大の字に伸びた。
彼は酔いから醒めた後、自身の書いたこの世の神秘とやらに改めて目を通した。
その冒頭にはなんと「リンゴを食べる時は皮をむくこと」と書かれていた。

   >(拍手して、続きを聴く)

…コホン。
だがこの手の話は、普段はこういう場では語らないせいぜい。
小さな茶館で話すくらいで、大衆酒場は避けている…
なにせ語る側が自由で、聞く側も楽しめる。
でないと、またどこかの頑固者に文句言われてしまうことになる。
まったく…
普通の講談では競争者たちに勝てないからと、よそ道で金を稼ぐしかできないなんて思われてしまっては困るからな…
私が本領を発揮すれば、誰よりもうまく語れるに違いない。
だが、毎日一生懸命働くなんて、疲れるだけだろ?
人生は、やはり気楽が一番だ!

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②また今度。

またいつでも!