法器(ストーリー)

修正(吹出) 武器

★・★★・★★★

生徒ノート
文字を使って学んだ事、実験結果、呪文を記録した。
文字と文字の間にある空白に、生徒の努力を記録した。

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ポケット魔導書
生徒達の間で流行っている魔術指導書。
ポケットに入れられるサイズだ。
教科書に書かれた長ったらしい原理と練習問題を省き、テストに出る内容だけが取り纏められている。
だが『魔導諸論』第十二版の改変により、現時点では使い物にならないようだ。

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魔導緒論
この版の『魔導諸論』は発刊当初から大きな論争を巻き起こした。
『第七章:風の元素の運用原則』の常識のずれはともかく、水と雷の元素についても、基本的なミスが沢山あった。
明らかに発刊前に校閲されていない。
しかしながら、この本は現在においても最も代表的な魔導入門書である。

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龍殺しの英傑譚
五人の英雄は魔龍討伐の道へと旅立った。
剣使いの騎士は栄光のために。
勤勉な魔法使いは研究のために。
敏捷な傭兵は賞金のために。
百発百中の弓使いは復讐のために。
あとは博学で知識豊かな作家、物語のために。
私は話し上手で書き上手。
文章とアイデアも完璧である。
実は、私はなかなか仕事が見つからず、仕方なく誰でもできる職についた。
しかも私は作家ではない、二十半ば過ぎても、ろくな仕事についたことのない若者にすぎなかった。

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異世界旅行記
安っぽいファンタジー小説。
一人の一般人が、死後に別の世界に行ったことを綴っている。
その世界は危機に瀕していた。
何千人もの人々が、地下に潜む鋼鉄の怪物に飲み込まれたのだ。
力ある者が指を鳴らすだけで世界を変えられる、全くもって非現実的な物語である。
ただ、一点だけ現実と同じところがある――
貴金属はごく一部の者だけに所有されており、金庫に隠されているという点だ。

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翡玉法珠
翠玉で作られた軽い法器。
耐久性があり、値段も安く、人気の商品である。
精巧に作られた法器は見た目が小さく、璃月の人に「翠玉丸」と呼ばれている。
護身用法器としては使いやすいほか、アクセサリーとしても悪くない。

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特級の宝玉
外装は豪華だが、適当に店の一番目立つところに置かれている玉器。
箱の中に、誰も聞いたことのない何らかの機関が発行した鑑定書が入っている。
宝玉の真贋を判別する眼力がなければ、あっさりとこんな外装と鑑定書に騙されるだろう。
ただ、本物の美玉と比べたら、この玉器の値段はまだ優しい。

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★★★★
西風秘典
西風騎士団の魔法学者の間に伝わっていた秘伝の書。
彼ら全員の知恵を記録している。
本には元素が凝縮された結晶玉が嵌められている。
西風秘伝の書が少ない理由はこれである。
結晶が珍しいわけではない。
西風秘伝の書は学者たち自ら手で製作しなければならいからである。
元素の真髄を習得した人に限り、この結晶宝玉を作ることができる。

騎士団設立後、暁の騎士ラグヴィンドは旧貴族の室内浴場を図書館に改装させた。
無数の詩人、学者、旅人のおかげで、今のモンドは北大陸において最大の蔵書量を誇る。
歌声や美酒は所詮一瞬の娯楽であり、物語と知識こそ永遠に続く美しい光。

実は今の図書館は最盛期の広さの六分の一である。
「秋分の大火」という大火災で、図書館の一部が焼尽した。

図書館の地下室に、ポプラの木で作られた頑丈な扉がある。
図書館と騎士団設立の前からあったその扉は、大火災においても無事だったらしい。
騎士団公式の知らせによると、そこは禁書エリアである。
しかし噂によると、もっと深い秘密を抱えているようだ。

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流浪楽章
楽譜と楽団メンバーの旅行記が載っているメンバー共有のメモ帳。
流浪楽団は根源を遡れないほど悠久な歴史を持ち、モンドの再建前にすでに解散している。
メモ帳は楽団メンバーと共に、異なる世界を見てきた。
演奏記録から、観客の喜びやその力強さを感じ取れる。

流浪楽団は旧貴族時代に結成され、希望、或いは恐怖の心を持つ人々は彼らを剣楽団と呼んだ。
当時のモンドは、唄さえ許されていなかった。

彼らは剣を笛の代わりに、弓を琴の代わりに、反乱の響を奏でた。
最後は城内に攻め込み、暴虐な貴族に天誅を下そうと試みた。

剣楽団は既になくなり、彼らの反逆も人々に忘れられた。
だが、反逆の意思は、血の繋がりと共に、永遠に伝わっていく。

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祭礼の断片
モンドの先民は、激しい風の吹く崖に劇場を建設し、神を敬う慣習がある。
祭祀は演劇の形で行われる。
神様は物語と唄を好むと彼らはそう信じている。
この台本の歴史は数千年以上。
すべてを読むことは難しい。

遠い昔、烈風の君王と北風の王狼の戦いは、モンドの大地に砂のような風雪を巻き起こした。
極寒に耐えられない人々は、モンド東部にある高い崖で神殿を設立し、神様のご加護と恩恵を祈る。

風の息吹は今を吹くが、時の灼熱は永遠であり、誰にも止められず、抗うことはできない。
風神は台本のページをめくる。
だが台本の字を掠れさせるのは冷酷非情な時の神である。

風の神と時の神、両者は似たような悲しみをもたらす。
こうして、神殿の祭祀対象は風神だけだと勘違いされていった。

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旧貴族秘法録
精美な巻物。
封蝋されているため、時間が経っても、腐らず蝕まれずに残った。
宮廷魔法使いの魔法研究が載っている巻物。
中身は今みても先鋭的な内容である。
宮廷魔法使いの仕事は各地の管理や魔物の退治である。
それ以外に、貴族の教師も担当する。
巻物には歴史、問題解決、地方管理、文化知識がたくさん書かれている。
そのため、旧貴族の統治を終わらせた後に、宮廷魔法使いもモンドの外に追い出された。
旧貴族を善に導く彼が責任を果たせなかったからだ。

モンド城成立当初、ローレンス一族の主母ヴァニーラーレは人々を率い、神の奇跡を称えるため、広場に巨大な神の石像を作らせた。

神像の下に刻まれている銘文は、昔各集落のリーダーがモンドを永遠に護ると誓った誓約の言葉である。
しかし、時の流れにつれ、ローレンス一族は先代の願いに背き、神像も倒された。
賢明な宮廷の魔法使いたちも、その歴史と誓約をなかったことにした。

西風騎士団の時代になり、神像は再建された。
だが、誓約の言葉は永遠に忘れられた。

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匣中日月
璃月の街に伝わる暗金の宝珠。
かつて天地日月の光を吸い込んだ後に、木の匣に数千年保管されていた。
こうして中の力は保存された。
木の匣がなくなった今、宝珠は再び輝く。
天地と古今を知る者が使えば、数千年の静寂の力を引き出せるだろう。

璃月港の宝石商の間に、名匠クオンが天地の光を一つの匣に集めたという伝説が伝わっている。
そして匣を玄武岩で作られた密室に保存した。
こうすれば、50日後に太陽と月の光が実体化する。

信じられない話ではあるが、多くの璃月人はクオンの神業は神をも凌駕すると信じている。
神業について、年老いたクオンに話を聞いた人がいたが、彼はただこう答えた。
「継続するのじゃ」

彼の弟子の話によると、「匣中日月」が完成した時、天地に異変が起こった。
これは偶然なのか、それとも神をも驚かせたのか。

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璃月の工場が作った古い法器。
製造番号や製造時期は不明。
混元を意識して作られた円型の法器。
核に宝玉を使っており、蒼穹の星を意味する。

災いが終息した後、魔物の残党が各地に点在した。
よって武器以外に、方術も必要とされた。
しかし、法器の生産水準は数百年前から何も進歩を遂げていなかった。
壊れやすく、使い物にならない。
方術士は璃月雲家の当主、雲輝を訪れ、新しいの設計を依頼した。
雲輝は「試作」シリーズに法器を加えた。

古木と希少な鉱石を素材として使用した。
中心にある宝玉は方士一族からの献上品であった。
石珀を50日間焼き続け、そしてまた50日間山の泉に浸すことで完成に至る。
炎と水を交互に接触した宝玉は、堅硬な強度と天地のエネルギーを持つ。
この宝玉を使った法器は、それ自体が魔力を練ることが出来る。

宝玉は透き通って琥珀のように輝く。
雲輝はそのを「金珀」と名付けた。
それは、璃月全ての妖魔退治の起源であった。

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世の全てが璃月にあり。
これは偉大な璃月港への讃美である。
他の国の珍宝も人と共に璃月港に来る。
大陸周辺の海域を集録した図譜に、各水域の海流、暗礁、風向のことが細かく記載されている。
異国の典籍らしく、開拓者精神、冒険者の知識、勇気、そして信仰が秘められている。

標題紙にこう書いてある。
「海風と海流を愛せ。
さすれば風と水が目的地まで導くだろう」
「海風と海流を畏れよ。
風と水は時に鋼鉄をも引き裂くだろう」

全ての海の性質を把握するため、満遍なく暗礁を探り、貿易から風を感じ、鯨の群れを探す。
無数の船員が全ての出来事を、このしみだらけの本に記録した。
恋人の髪と肌を描くように夢中になった。

異国では、ベテランの船員は海を恋人だと考える。
そして塩辛い海水を「彼女」と呼ぶ。
海の心は秋の空か、それとも海のロマンか。
そして、この典籍は海と同じように、誰かの所有物ではない。
夢とロマンを求める水夫のように、世界を旅する。

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黒岩の緋玉
希少な黒岩で作られた魔導器。
自然の力を操る。
装置の中心に嵌め込まれた血色の宝玉は、時に暗く、時には明るく光る。

天衡山や岩層淵など、岩王帝君の管轄地域に豊富な鉱物資源があった。
しかし発掘を始めてから、天衡山とその周りに坑道が増えてきた。
中には地中奥深くまで掘ったところもあった。
ある日突然、大地の怒りが爆発した。
山は揺れはじめ、坑道が崩落した。
地中深くには崩落に巻き込まれた死者の魂が漂い、夜になると慟哭が聞こえる。

ある日、軽策山を訪れた人がいた。
男は長衣を纏い、雲遊方士と名乗った。
彼は璃月の雲氏と寒氏を探しに来たらしい。
雲氏の娘、雲凰はちょうどその時軽策山にいた。
この話を聞き、すぐ寒武の息子である寒策を呼んできた。
男は昔、雲氏と寒氏二人に魔導器を造ってもらった話を雲凰と寒策に教えた。
方士は、今の璃月は危ないからと、二人に血の宝玉を渡した。

二人はすぐ黒岩魔導器の製造に着手し、この血の宝玉を魔導器に嵌めた。
血の宝玉は大地に反応し、これから起こる災難を警告するように、明滅する。
この魔導器は天衡山の下に設置され、大地の怒りを買わぬよう人々を導いた。
そして、大地の怒りが収まった時、黒岩の血玉も消えていった。

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滅多に見かけない天然琉璃で作られた美しい魔導器。
伝説によると、昭心の玉はつやつやして明るかったが、月日が経つにつれて輝きを失った。
また、静かな夜は昭心から微かな音が聞こえるらしい。
その音はまるでそよ風や泉水のようであった。

昭心は仙人の遺物だった。
その後、璃月の民を伝って雲氏の手に渡った。
ある日、雲氏は山の散策中に、仙人を訪れてきた方士である黄生と出会った。
二人は意気投合し、雲氏は昭心を黄生に譲ろうと思った。
黄生は慌てて断ろうとしたが、雲氏はこう言った。
「これは自然の精粋である。
無垢な心の持ち主にしか扱えないものだ」

黄生は雲氏にお礼を言い、昭心を身に着け、璃月へと出発した。
道中は雨にも風にも邪魔されることはなかった。
仙人を探して各地を歩き回った黄生は、町で水や食べ物を買う時、一度も騙されたことが無かったらしい。
多種族が混在する地ではとても珍しいことだった。
どうしても納得できず、尋ねる者がいた。
「この呆けた男は職玉法珠なぜ一度も騙されなかったんだ?」
黄生が答えた。
「この昭心のおかげさ。
悪意を感知すると震えて教えてくれるんだ」

「昭心」という2つの字は、「人の心をあきらかにする」という意味。
だがその仕組は誰も知らず、「そういう伝説だから」と民に広まった。
深夜になると、岩の間を流れる湧き水のように、窪みに吹くそよ風のように、微かに音が聞こえるらしい。
この二つの音は、かつて人々に善を説いた伝説に登場する、邪念を食べる妖怪の騒ぐ音に似ている。

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フィンドニールの祭司の娘がこの白の樹の下で誕生したとき、祝福と共に、緑豊かな山脈の国は喜びに満ちた。

シャール・フィンドニールの幸福は永遠に、大地をまたぐ枯れることのない銀白の樹のように――
だれもがそう、思っていた。
かつて無数の人や事柄を見てきた記録者ですら、姫の美貌と才徳は月の光のように清らかに輝く…

しかし世界を凍らす鋭釘が突如降り、この樹さえも粉々に砕かれた時、あの少女は一本の枝を持っていった、この国を覆い隠す樹の命をつなぎとめるために。
しかし結局、それも叶わぬ夢となった。
刃のように冷たい吹雪は、月の明かりを遮ってしまった…

それから長い月日が経った遥か昔――
漆黒の龍と風の龍が命をかけて戦い、腐植の血が灰のような山を赤に染めたとき、樹は自身がまだ死んでいないと気づき、貪欲なまでに、自らの根で大地の温かみに触れた。

誰かが穢れの無い緋紅のエキスを流し込んだ故、当の昔に死んでいた白の樹は、過去を思い出し、すべての力で、果実を実らせた…

我が守った者、我に祈りをささげた祭司、我のそばで絵を描いていた美しい少女、手にしたことのない幸せが、緋紅の果実となる。

悪の世界に正義をもたらすことができる者に、「苦しみ」を乗り越えられる、正義を捧げよう。

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ダークアレイの酒と詩
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【?】

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白辰の輪
【?】

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誓いの明瞳
「我に海淵の神になれと?」
純白の巨蛇は、目の前の童を見下ろしながら言葉を発した。
「我が未知なる海へと落ち延びたのは、貴金の神と鳴神に敵わなかったゆえのこと。」
「それでも光を望むのなら、いつかまた必ず、亡失を再び味わうことになる。」
「我の死は取るに足らぬもの。無為に生きる屈辱、汚名による恥辱――もう十分だ。」

巨蛇は、蛇の瞳のような宝珠を見せた。
「ならば、この宣誓の瞳を前に誓え。」
「我と珊瑚の着風属も、このように結盟した。」

「皆、先師スパルタクスの教えを忘れたのか?」
「神を崇めるな。頼れるのは己のみだ!」
白蛇は何も語らず、海淵の民の意志を尊重することにした。
この愚かな崇拝が、新たな信仰に敗れたのなら、それは抗う人々に対する侮辱になるだろう。

「ならば、この宣誓の瞳を前に誓おう。」
「かつて、我がすべてを失った時のように。」

「月日は流れ、島が成り立ち、ヴィシャップは退いた。
そして、聖士は法によって治められている。」
「珊瑚宮家、地走官衆、我の御使い――この瞳を前に大願は成就した。」
「以後、淵下において二者以上の不和が生じた際、他の決断を下す。」
「大日の塔は汝らの決議を聞き、自らの意志で崩落する。
これまでのすべてを消滅させるだろう。」

最後の言葉を言い終えた蛇神は、残りの民を率いて海へと向かっていった。
ついに、天の都との誓いを果たす時が訪れたのだ…

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満悦の実
【?】

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【?】

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岩王帝君が訪れたとき、沈玉の谷の先人はとうに山あいの村落に後退していた。
岩間の清水のように美しい玉を切り開き、古い儀式に従って荘厳な祭りを行っていた。
吉日になると、一族の人々は煩わしい労働から抜け出し、美玉を祭器として水に投じて祀った…
青い空の上で久しく沈黙している使者を記念し、来年の幸福と災禍を占うのだ。

沈玉の谷を支配していた魔神が異郷で命を落とし、岩王帝君の秩序がこの地を引き継いだとき、山野に落ちぶれていた先人の村落は、璃月からの文明を受け入れつつも、祭祀の伝統を残していた。
祭礼の弓歳月が流れるにつれて、硬い石も柔らかい水に磨かれて丸くなり、当地の古い伝統も璃月の移民に受け入れられた。
そのため、ここでは璃月港とは異なる風習が発展していく。
璃月港の人とは異なる温和な気風を持つようになった。

果てしない歳月が再び流れ、先人の氏族と村落は移民と融け合って、新しい宗族と集落ができた…
玉を彫刻する古い技術を失ったため、新たな時代では茶栽培が生業となる。
このため沈玉の谷には茶畑が広がった。
沈玉の谷の民は、もはや清水のような玉器を永遠に流れる川に投じることはなくなり、多くのことを忘れてしまった…
だが、遺瓏埠に登って先人と故人を祀る儀式は、谷間の清らかな宝玉のように、今も残っている。

時折、薬草摘みの者が谷間の廃墟から碧色の玉瓏を見つけることがある。
もう古き高天に応えることはできないが、今世の光はなおも輝いている。
物言わぬ玉瓏は、先人の流離漂泊の古い歴史を自ら語ることはない。
過去の謎はすべて、何気なく拾った者の推測と想像に任せるだけだ。

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純水流華
『クロックワークコッペリア』の抜粋
……
周知の理由で、『クロックワークコッペリア』の脚本は公開も出版もされていない。
ただ、当時のグロリア劇場の生存者のうち、一部の観客が記憶に基づいて幕間の休憩までのあらすじと台本を書き写している。
コペリウス氏の遺族と上記の方々の同意を得て、弊社はその原作の一部を復元できるよう、関連資料をまとめて整理した。
一部分から全貌を推し量ることができれば幸いである。
……
内容概要:
コペリウスの計画がファントムハンターに露見し、劫罰を受ける前にコッペリアに最後の別れを告げる。
……
コペリウス:
私のために歌っておくれ、私のコッペリアよ。
わが愛欲、わが罪、わが魂よ――
最後に私のために歌っておくれ。
コペリウス:
私の心に絹糸を巻きつけ、それで私をしっかり縛り、首かせをはめるのだ。
君の見ている前で、破滅を迎えさせておくれ。
コペリウス:
私の心は決まっている。
だから、これからは私を喜ばせてくれる人を探すのではなく、私が選んだ人に喜びをもたらしたい。
コペリウス:
それで君に笑われようとも…
それは私の考えが愚かなのではなく、私の行動がかくも不器用だからだ。
コッペリア:
私に何を歌えと仰るのですか、愛する人よ。
この傑作の罪と避けることのできない罰のために、どう歌えというのです?
コッペリア:
世の人々は、表面的に華やかな現象を見ただけで喜びます。
情熱的な人が、命取りになる毒が潜んでいることにも気づかず、金メッキの果実を求めるようなもの。
コッペリア:
コペリウス、私のコペリウス、あなたが追い求めたものは空虚な場面のように跡形も残っていません。
誘惑はいつも旅を終わらせるものだからです。
聡明な人であれば知っています。
……
内容概要:
コッペリアは同行していた青年に旅に出た真意を打ち明けると、彼女の目の前で亡くなった創造者の後を追うことを決意した。
……
ナサニエル:
この件は荒唐無稽だが世の常だ。
知恵ある者は、いつも愚か者の言いなりになる。
人生は低俗な喜劇のよう未完成の傑作なものだ。
コッペリア:
まさにその通りです。
私のことはご心配に及びません。
すぐにこの辛い苦難は跡形も無く消えるでしょう。
コッペリア:
私を創造してくれた人は、この世を去りました。
あとはこの錆びた歯車も同様に消えてしまえば、一切の罪は忘れられるでしょう。
人間にとって、忘れることは許しを意味します。
コッペリア:
私はもう陽や月や星を見る必要はありません。
林の中を飛び回る鳥の歌を聞く必要はありません。
この心臓を与えてくれた人が去った世で、なお鼓動を続ける必要はありません。
ナサニエル:
どうするつもりだい?
コッペリア:
この心――
人間のように鼓動する心臓は、すでに旅の途中で同じ重罪に染まっています。
苦痛と後悔に苛まれる心は、どこで安らぎを求めるべきなのでしょうか。
……

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此岸と彼岸の狭間、現在と過去の狭間、
空は広大で果てしない、一面の自由な碧。
花は大地に根を下ろしつつ、限りない天空に憧れ、
翼を持たずして尚、飛び上がろうと上を向く…

草花の運命は結局、深い大地に張る根に縛られる。
蒲公英の命は空の限りない自由を味わう運命。
果てしない碧の世界は、円蓋のように大地の四方を逆さに映す。
白い雲が漂い、穏やかな大空を飾る。

あたかも粘り強い蒲公英や野菊のように、
青緑の大地の人々は、自由への信仰に掌を握りしめる。
荒れ狂う暴政の吹雪に見舞われても、
高潔な節操が堕落し腐敗しても。

しかし、天空を吹く風を称える伝統が綴られ続ける限り、
この貴い自由が代々の人に賞賛の言葉と共に伝えられ続ける限り、
人好みの数多の民衆は天空へと飛ぶ蒲公英のように、
自由な心で次から次へと縛るもののない幸福を追ってゆく。

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★★★★★

千風万雲通覧。
北の大陸全土の風と雲を、詩と絵の形で記した典籍の謄本。
十万筋の雲があり、一筋一筋に雲と風が絡み合う。
雲の絵は風に形を与えた。
詩は風に独特な性格を与えた。
本来は形を持たない千風だが、バルバトスにとっては親友や家族のような存在。

伝説によれば、上古時代に、風の神は典籍の原本で四風を呼び寄せた。
氷雪を吹き飛ばし、凶暴な怪獣を撃退した。
さらに雨を降らし、モンドを創った。
寛容な風神はこの典籍の内容を人々に共有し、「千風万雲」と名付けた。
時が経った今では、典籍に記載されていない内容も多く存在する。
無数の風と雲を記載した典籍は、歌謡や伝説となり人々へ伝わった。

風神が存在し続ける限り、千風の歴史は決して終わらない。
魔龍ドゥリンの翼が日の光を覆い隠した時、バルバトスは現れた。
激戦の中、風神は千風を詠い、風龍を召喚した。
この典籍を心得た者は、千風万雲の真名とその偉大なる力を手に入れる。

今、モンドの空は穏やかに晴れている。
風神と風龍は新たな帰る場所を見つけた。
この典籍も信頼できる者へと託した。

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四風原典
極めて古い風の教典。
風神を祭る者の間に代々伝わっている。
シミだらけのページは無数の手形を残し、一部は風と共に消えていった。

高塔の暴風君王による暴政が蔓延る時代、教典は人々の絶望による訴えを記録した。
一面の氷雪が消えた時代になると、教典は命の新生による歓喜を記録した。

旧貴族による傀儡政権の時代、奴隷の間に伝わっていた教典は千風への渇望を記した。

モンドの人々は、耐え忍び、抗争し、喜び、そして自由を楽しむ。
それらの貴重な時代に、風の教典は厚く重くなっていった。

しかし、新しいモンドが誕生し、教会が旧貴族の束縛から解放された時、四風の教典は、高い棚に置き去られることを望まず、教会の宝庫から消えていった。
恐らく、この本はモンドの風や人と同じく、なにものからも縛られたくないのだろう。

標題紙に綺麗な字でこう書いてある。

風の神の子よ、永遠に覚えておきなさい。
命は風と共に誕生し、また風と共に去っていく。
だから、どうか悲しまないで。
土に還ったのは骨と肉だけ。
本当の私は千の風となった。

花の香りや草木のざわめきを感じるのは、私が自由と風を唄っているから。

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【?】

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不滅の月華
【?】

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神楽の真意
【?】

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【?】

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【?】

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【?】

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金銭の流通する道は、世界に勢いよく流れる血管を描き出す。
無数の生命がその血潮の中で浮き沈みし、やがて巻き込まれ、呑み込まれる。
当然、本来すべてが我々「人」の功績である。
まさに数字と数学が金勘定のために生まれたように、文字は借用証を書くために存在し、法は所有者の変わる財を制約するためにある。

「人」は金銭の奴隷ではなく主たるべきで、黄金の心臓は「人」の世界のために拍動するべきなのだ。
――当然、真に金銭を所有できる者はいない。
それは結局、我々「人」の手を経由して、世界の片隅から時間の終結へと流れるにすぎない。

ゆえに最も理解し難いことと言えば、いわゆる「世界の片隅」が選ばれ、制約を受けること。
ゆえに最も受け入れ難いことと言えば、そもそも我々「人」に属するべき偉業が、いわゆる「神」という代物に横奪され、制約されること。
それこそ我々が取って代わらねばならない理由。
金銭の心臓が異郷の「神」に奪われた以上、彼らはしばらく人々を奴隷のように酷使することができる。
たとえ黄金の心の持ち主になることはできずとも、すべての人に平等に金銭を掌握させるべきだ。

「こう言うと想像しにくいかもしれないな。
腹案を披露させてほしい。」
「まずは新しい貨幣を創り出し、モラへの依存を置き換える。」
「場所となると。
世間と断絶した小型の経済圏。」
「目星を付けている場所がある。
神の力の及ばない、国の中の国だ。」
「浸透させるのにそれほど時間はかからないだろう。」

「名前をどうしようか…
命名するのは本当に嫌いなんだ。
そうだ、こうしよう。」
「実験を許可していただけたことを記念して、『特別許可券』と呼ぼう。」

製造した精密機械の監督者はブンブンと音を立て、ちっぽ現在のが増える、またけな国の金の流れを観察している。
疲れを知ることなく、すべての金銭の動き、すべての人の貯蓄と浪費、様々な価値の変動、特定期間内の貨幣毎の流通回数を記録をする。
その間、唯一の法律は貯め込む者の私法で、唯一の制裁は貧しさか死だけだ。
あるいは利益を貪り権力を握る支配者となり、あるいは支配され死ぬまであくせく働く。
ルールはいつも公平だ。

こうして人は、自身の持つ野心と財産を頼りに、神と肩を並べる。
そうした競争の中ですべてを失った弱者は、人の世の流れに呑み込まれる。
もはや神の力が介入し、貧者の目の前で富者の威勢を飾ることはない。
もはや神の財産がなだれ込み、富者の足元から貧者の尊厳を救うことはない。

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