クレームがこんなにも…
どうしたらいいのでしょう…
あなたは…
上が言っていた、私たちを手伝ってくれる旅人さんでしょうか?
ちょうどいい時に来てくださいました。
実は今、少し厄介な状況でして。
ご存知の通り、現在ここでは容彩祭が開かれています。
容彩祭では商品の展示即売以外にも、無料で楽しめる娯楽が色々と用意されています。
ですが本日、それに関するクレームが沢山入ってきたのです。
ある集団が、狸の顔出し看板を占拠していると。
その集団はずっとそこを占拠しているようで、他の方が利用できなくなってしまっているんです。
はぁ、本当に困りました…
もちろん交渉に行きました…
ただこれらの設備は、もともと皆さんに展示会を楽しんでもらうために設置したもの。
原則としてすべての方に利用する権利があり、時間も定められてはいません…
つ…捕まえる?
確かにそれで今ある問題は解決するでしょうが…
天領奉行が無実の人を捕まえた…
そんな噂になってしまいませんか?
我々も、その集団の元へ交渉には行ってみたんです…
ただこれらの娯楽設備は、原則としてすべての方に利用する権利があり、使用時間も定められていません…
我々にはどうしようもないのです。
ですので、どうか交渉に行ってきてもらえないでしょうか?
これらのクレームが解決されることなく、九条様に知られてしまったら…
私の今月の賞与金が水の泡になってしまいます…
蛍、行ってみようぜ?
ありがとうございます!
彼らは広場の東側にある、狸の顔出し看板の近くにいます。
それに荒瀧派もいるぞ。
やっぱりあいつだったのかよ!
なにしてるが聞きに行こうぜ。
元気にしてたか!
お前たちも容彩祭に来てたのか、気が合うじゃねぇか。
やっぱり、俺の目に狂いはなかったみてぇだな。
オイラたち、ある問題を解決するためにここに来たんだ。
解決したい問題…どんなことだ?
俺たちが手伝ってやるぜ!
>あなたたちが問題。
へっ!?
ずっとおまえたちが撮影看板を占拠してるせいで、他の人が使えなくなってるって天領
んなことねえんじゃねぇか…
>じゃあ説明して。
へい!親分!
事の始まりは、二か月前…
俺たちが容彩祭の開催を知った日のことだった…
知っての通り、容彩祭では沢山の文化的な本の展示と販売が行われる。
賢明な親分は、こういう機会にこそ出版物なんかを出して荒瀧派を紹介するべきだと言ったんだ。
そうすれば、俺たち荒瀧派のイメージアップにもつながるからな。
しかも小金稼ぎになるから、家計の助けにもなるって言ってたぜ。
そこは肝心なところじゃねぇぞ。
最初は時間にも余裕があった。
二か月もあるから、まずは六十ページ書こうって親分は言ったんだ。
でも一か月経っても、一行しか書けてなかった。
文章の質を保つためだ。
だから計画していたページ数を減らして、残り一か月の期間で、二十ページほど書ければいいと思ってた。
でもその次の日、親分が『七聖召喚』っていう札遊びを持ってきてみんなハマっちゃったんだ。
少ししか遊んでないつもりだったのに、気づいたらあっという間に半月が過ぎてたんだ!
ホント、不思議な遊びだよな。
創作の題材になるものを探してたんだ。
だから親分が、いっそのこと宣伝用の色付きページにしようっで決めたんだ。
そうすれば、決まり文句だけ考えればいいからな。
決まり文句ならすぐに思いつくだろ?
そりゃあもう早かったさ。
半日だけで三十個も思いついたぜ。
だけど候補が多すぎたせいで意見が分かれて、結局一週間経った頃にようやく決まった。
俺たち…払えねぇ!
コホン…
物事は手間をかけた分だけ出来栄えがよくなるんだよ。
急いで印刷したものには、必ずボロが出る。
俺たち荒瀧派は、やるからには最高のもんをやる!
それが今回諦めた理由だ!
>楽しければいいんじゃない。
おうよ!
鬼でも人間でも、一番大事なのは楽しいことだ。
せっかくの祭りなんだから、野郎どもを連れて楽しんだほうがマシだろ!
こうやって顔出し看板を占拠することなのか?
いやぁ…最初は飲み物を買うために、親分が連れてきてくれたんだ。
祭り限定のやつがあるって聞いてな。
しかも普通の飲み物なんかじゃねぇぜ。
セーリングブリーズ商店と八重堂が協同で開発した、あの人気小説――
『お願いっ!私の仙狐宮司』に登場した飲み物さ!
でも祭りに来たら、俺たちの格好が個性的すぎるってんで、係りの人に止められた。
元の格好に戻ってからじゃないと、入れられえねぇって…
あんだけ大金かけて、苦労して手掛けたのに!
あいつら、街の景色に影響を及ぼすとか言いやがったんだ。
守
とにかくそんなこんなで、セーリングブリーズの屋台に行った時には、もうその飲み物は売り切れてた…
悔しかったが、どうしようもできなかった。
でも帰り道にこの顔出し看板を見て、親分がせっかくだからって…
それでここを占拠してるのか?
ゴホンッ…
公共の設備に、占拠もなにもねぇだろ?
これは、公共資源の有効活用ってぇんだよ。
昇
親分の言う通りだぜ!
この顔出し看板を、存分に輝かせてやろうぜ!
元太
こいつを俺たち荒瀧派と同じ生き様にさせてやる!
一分一秒たりとも無駄にしちゃあならねぇ!
うわぁ――崇高そうに聞こえるけど…
>本を買いに行くこともできるよ。
守
恰好に金をかけすぎて…
もう飲み物一杯分の金しかないんだぜ…
本を買うにはまったく足りねぇ。
だとしても、お金がないからってこの無料の看板を占拠するのはだめだろ。
他の人が使えなくなっちゃうじゃないか。
まあそういう意見も…
道理に合わなくはないな。
じゃあ早く出ろよ!
うぅ…くぅ…
お前たちも知ってるだろ、俺ら荒瀧派は名の通った大組織なんだ。
この撮影看板を輝かせると決めたからには、絶対にやり遂げなきゃならねえ。
適当な気持ちで計画をあきらめるなんざ、筋が通らねぇ。
んなもんは、荒瀧派の威信に傷をつけちまう!
だが…もし俺たち荒瀧派のやり方でこのことを解決できるんなら、何も問題はねぇ。
荒瀧派のやり方…
オイラ、いやな予感がしてきたぞ。
だからよぉ…
この俺様、荒瀧・天下第一・一斗と熱く燃える豪快な決闘をしようぜ!
お前たちが勝ったら、この看板をゆずってやんよ。
>まさか虫相撲?
>やった、虫相撲をやろう!
虫相撲こそ最適な方法!
最近、超強えオニカブトムシを捕まえたんだ。
俺様はそいつを「暗黒悪魔」と名付けた!
くっ…!だが惜しいことに、俺様は今日、「暗黒悪魔」を持ってきてねぇ…
持ってきてなくてよかったぜ…
だが決闘はどうすりゃいいんだ?
困ったな…うーん…
あっ、見ろよ!
あれトーマだよな?
あいつも祭りに来てたのか?
蛍、トーマに決闘の方法を聞いてみようぜ。
トーマならきっと考えがあるはずだ。
トーマ!トーマ!
こっちこっち!
あっ、旅人、パイモン!
…トーマと会話する…
ハハッ、こんなところで会うなんて、とても奇遇だ。
>どうしてここへ?
展示会で狸の顔出し看板がすごく好きな「人物」が現れたって聞いてね。
何しろオレたち社奉行が主催する祭りなんだから、そんな「人物」がいるなら、会っておくべきだろう?
その赤い角…
オレの目に間違いなければ、かの有名な荒瀧派の長、荒瀧一斗殿では?
ガーッハッハッハッ――!
やっぱトーマのあんちゃんは見る目があるぜ!
神里家の無敵家司、俺様も以前からお前のことは聞いてたぜ!
初めまして、一斗殿は実に褒め上手なお方だ。
わぁ、この二人、もう意気投合してるぞ・・・
まさか一斗殿と旅人がここにいたとはね。
オレもギリギリ地元民といえるだろう。
何か困ったことでもあるのかい?
遠慮しないでなんでも言ってくれ。
一斗のことだ!
こいつが…
なんてことねぇよ。
俺たちはただ、決闘の方法について話し合ってただけだ。
ほう――決闘の方法ね…
それなら、一つ提案がある。
容彩祭での決闘なら、「奉仕活動」対決にしてみないか。
共に容彩祭を盛り上げるんだ。
どうかな?
奉仕活動対決?
聞いた限りじゃ、まったく荒瀧派の豪気とは、関係なさそうだが…
点数でいうと二点しかやれねぇな。
一点は旅人、もう一点はトーマのあんちゃんの面子のためだ。
ちなみに…親分の満点は、百点っす…
アハハッ、うん、確かにこの仕事には豪快さは必要ない。
必要なのは忍耐と奉仕の気持ちだけだ。
それに奉仕活動だから、これといった報酬もない。
唯一、セーリングブリーズの作品提携ドリンクが、差し入れとして配られるのみ…
確かに荒瀧派の体面には相応しくないかな。
少し考えが足りなかったよ。
おい待て…
今、何の差し入れだって?
ん?八重堂とセーリングブリーズが協同で出した特別な飲み物だ。
特に言うほどのことでもないが…
昇
親分!
あの飲み物だ!
元太
これをやれば、あの飲み物が!
トーマのあんちゃん…
…お前は知らないかもしれねぇが、俺様が、言った二点、実は二点満点中の二点だ。
何せ俺たち荒瀧派は、忍耐と奉仕で出来てるんだからな!
まるで俺様のために作られたみたいだぜ。
ガーッハッハッハッ――!
旅人、これで決闘しようぜ。
先に奉仕活動を終わらせたほうが勝ちだ!
どうだ?
さっきまで興味なかったくせに。
>実は決闘しなくてもいい…
>飲み物ならトーマに直接言えば…
この俺様、荒瀧・鉄血第一・一斗は、曲がった人生を辿ってきちゃあいねぇ。
決闘をやるって言ったからには、やるんだよ!
目当てが飲み物だって、他の人に知られたくないだけだろ。
だったら、オレが審判を務めるよ。
奉仕活動の仕事はとても簡単だ。
祭りで手伝いを求めてる人を助けてあげてくれ。
届いた仕事の依頼を、君たちにも配っておくよ。
準備ができたら、始めようか。
どれどれ…一つ目の仕事は、忙しい屋台主の手伝いみたいだな。
屋台はこの近くにあるみたいだぞ。
…祭りの屋台の店主を手伝う…
元太(親分は無敵だ!!)
石田
奉仕活動の人か?
ちょうどいい時に来てくれたな。
見ての通り、屋台の周りに落ち葉や埃が溜まってしまっていてな。
何度も掃除しようとしたんだが…
ここ数日お客さんが多すぎで、掃除する時間がなかったんだ…
感謝するぜ!
…屋台の近くの掃除を手伝う…
…店主の石田に報告する…
石田
もう終わったのか?
助かったよ!
こんな熱心に奉仕活動に励んでくれるなんて、ありがとうよ。
どれどれ…次の仕事は、祭りのお客さんの手伝いだ…
こっちも急がないと…
…祭りの客を手伝う…
鯨井坊や
お姉ちゃん!
助けて!
鯨井坊やも祭りに来てたんだな。
でも今はおまえの遊びにつき合ってやる暇がないんだ。
鯨井坊や
遊んでほしいんじゃなくて、困ってるんだ!
祭りでは新しい手まりを置いてるって聞いて、来たんだけど…
うぅ…絶対に近くにあるはずなんだ…
あるはず…
お姉ちゃん!
手伝ってくれる?
おまえに会うと、なにがなんでも手まりを探す羽目になるんだな…
鯨井坊や
うぅ…手まり、どこいったんだろう…
…鯨井坊やの手まりを探す…
…鯨井坊やと会話する…
鯨井坊や
わぁ、よかった!
これでまた手まり遊びができるよ!
お姉ちゃんありがとう!
次が最後だな!
港口で貨物を運ぶ手伝いみたいだぞ、行こうぜ。
…港口に行く…
平泉
君たち、祭りで奉仕活動をしてくれてる人だよね?
よかった。
この貨物をどうしようか、困ってたところなんだ。
最近はすごく忙しいから、港口にいる仲間たちも来られなくてね。
中は新鮮な豆乳だから今すぐ倉庫に送り届けないと行けないんだ。
外に置いておくと、すぐに品質が下がってしまう。
悪いけど、倉庫まで届けてくれるかい?
同僚の竹内が向こうで待ってるはずだ。
よろしく頼むよ。
-------------------------
平泉の荷物
とても新鮮な豆乳。
適切に保存しないと、すぐに品質が劣化してしまう。
-------------------------
…荷物を倉庫に運ぶ…
竹内
あっ、熱心に奉仕活動をしてくれてる人たちってのは君たちのことかな。
疲れたでしょ。
貨物を置いたらゆっくり休んでいって。
社奉行がセーリングブリーズに頼んで、君たちにお礼として飲み物を用意してるらしいわ。
ふふ、実はこの豆乳も、その原材料の一部なのよ。毎日新しいのを作ってるから、とっても新鮮!
そういえば、さっき加工したての豆乳がそっちに届けられたから、あと少しで君たちも飲めるはずよ。
えっ!?
セーリングブリーズの特製ドリンクの中には…
一斗のやつ、豆製品は飲んじゃいけないはずだぞ!
早くセーリングブリーズに行かないと…
…セーリングブリーズに行く…
ガーッハッハッハッ――!
やっと着いたか。
だが俺様は、もうとっくに完了してるぜ。
奉仕活動でも、俺様は天下無敵だな!
ハハハハハッ!
蛍、お前の負けだ。
勝者の褒美である、この特別な飲み物…
セーリングブリーズ商店と八重堂が共同開発した、『お願いっ!私の仙狐宮司』の無敵ドリンク!
早速、遠慮なくいただくぜ!
ガーッハッハッ――!
ドリンクよ、いざ俺様の腹に!
>待って!豆が!
>その飲み物には豆が入ってる!
ゴクゴクぷっは~!
一斗は豪快に飲み物を一気飲みした。
くぅううう――うまい!
うま…い…
いや、確かにうまいが…
むむ…何かおかしい…
守
親分、その飲み物…
昇
豆が入ってるらしい!
はっ!?
鍛え上げられた身体がばったりと倒れた。
元太
親分が!
親分が倒れた!
守
はやく医者のところに!
どういうことだ、一斗殿は豆製品がダメなのか?
昇
親分は豆アレルギーなんだ!
まさかそんなことが…
こうしちゃいられない!
早く彼を連れてオレに着いて来てくれ。
すぐに医者を手配する!
大事にならないといいんだが…
すまない、蛍、これはオレの責任だ。
こんなことになるなんて予想していなかった。
一斗殿はオレに任せてくれ。
彼が必ずまた立ち上がれることを約束しよう。
だから君たちは心配するな。
またあとで。
カルピリア
あなたのお友達さん、豆アレルギーだったのね。
私の周りでは見かけないけど、確かに聞いたことがあるわ。
うちの店が原因でこんなことになって、本当に申し訳ないわ。
よかったら、これを受け取ってちょうだい。
豆乳を入れないて作った特製ドリンクなの。
見たところ、あなたのお友達さんはこの飲み物を気に入ってくれているようだから。
豆乳がないから味は少し違うけど、よりお友達さんに合っていると思うわ。
ささやかだけどお詫びのしるしだと思って、どうか持って行って。